自動車メーカーの「トヨタ」が開発したバスケットボールロボの「CUE」をご存じですか?
社内有志団体「トヨタ技術会」のイベント企画である「全くの素人が一から人工知能の開発に挑む」から生まれた「ロボット型のプロバスケットボール選手」です。
漫画「SLAM DUNK(スラムダンク)」の主人公・桜木花道のセリフ「(シュート練習)2万で足りるのか?」という言葉をきっかけに、「人工知能でゴールまでの距離を自分で計算し、100%シュートを決めるロボットが開発できたらすごくないか!?」というアイデアから開発が始まったそうです。
現在の最新バージョンは、「CUE6」ですが、旧バージョンでも様々な記録を打ち立てています。
- ゴールまで7mのスリーポイントシュートに成功(CUE2)
- ゴールまで12mのセンターサークルからのシュートに成功(CUE3)
- フリースロー連続2020回達成(CUE3)
- シュートを打つまでの動作が3秒に(CUE4)
- 時速7キロでのドリブル(CUE5)
まだ、生成AIが世に現れていない時に、人型ロボットに着手したこの集団の活動はまさに「部活」のようなノリで始まったそうで、開発に携わったすべての人達はAIロボットについて素人だったと言います。
そのため、「順風満帆に見える取り組みにも、数え切れないほどの苦労と失敗はありました」と、プロジェクトリーダーのR-フロンティア部「野見知弘主査」は話します。
実際には、桜木花道が言う「2万回」どころではなく、「20万回」くらいの試行錯誤を重ねたそうで、膨大なテスト動作には多くの失敗もあったでしょう。
ボランティア作業の自主活動で開発された初代の「CUE」が、やがて1年ほどでロボット初、「アルバルク東京」へのプロバスケットボール選手登録を果たします。
2018年3月にはアルバルク東京のハーフタイムショーでパフォーマンスを披露し、大きな反響を得ました。
「CUE5」は、東京オリンピックの開催期間中にドリブルなどの新たなパフォーマンスを披露し、現在はパスができる第六世代の「CUE6」まで開発が進みました。
「AI」と聞くととてつもないコンピュータのプロ集団が開発していると考えてしまいますが、違う分野でもコンピュータに詳しくなくても、「トヨタ技術会」が「あくなき挑戦」をした結果が表れていますよね。
一見自分に不得意な分野、「無理じゃね?」と思うような分野から逃げたくなる場面でいかに「桜木花道を作ろうよ!」と思えるかが重要となるのでしょう。
もちろんトヨタあってのサポートも忘れてはなりませんね(笑)
現在は、トヨタでも「コミュニケーションロボット」の開発が進み、人とロボットとのコミュニケーションに新しい価値を見出そうとしています。
投資家目線で見る「AI市場」とは違って、ものづくりの現場での「AI」は今後どのように人間社会に溶け込んでどのような価値を持つようになるのか。。。
AIとの共生がますます楽しみになりそうです。