様々な仕事をしてきたおかげで、若い頃から個人宅に訪問する機会がたくさんありました。
それも玄関先だけでなく、だいたいその家のメインであるリビングルームに入ってあれやこれやとその家の方々とお話する場面も多くありました。
「お金持ちの家は玄関が綺麗」
という話はよく言われますね。
これまで見てきた様々なお宅の特徴から、玄関が綺麗なお宅は「お金持ち」というよりは「生き方に余裕がある人」だなと思っていました。
「お金持ちは生き方に余裕があるから同じではないか」と思ったかたもいるでしょう。
もちろん、お金持ちでも綺麗な玄関というのはあったのですが、生き方に余裕のある人は玄関の風通しがもの凄く良いのです。
お金を稼げていても余裕のない人、余裕がないように見える人というのは、結構いました。
それなりに「高給取り」と言われている職業に就いているにもかかわらず、玄関に入るとパッと見た印象が「モサッ」と物で溢れかえっていて、「家の中も凄い汚い」と当の本人も自覚していたり、会社を経営して従業員もそれなりに雇って地域では広く活動している経営者なのに、玄関に入ると無数の靴で溢れかえっていたりと様々です。
お金があってついたくさん物を買ってしまい、その置き場がとりあえず玄関という人もいました。
これは「だらしない」というよりは、自分の仕事や生活にたくさん時間をかけすぎて玄関の汚さをまったく気にしていない場合が多いのです。
そのため誰かが来訪して汚い玄関を見られても、全然平気だったりします。
一方「生き方に余裕がある人」というのは、合理的に生きているかたです。
玄関から家の中に至るまでの導線が整備されていて、リビングに入るまでにスムーズに進んでいけます。
決してお金持ちではなく、夫はサラリーマンで奥さんは家計を助けるためのパートに出ているような標準的な家庭のかたもいましたが、風通しは非常に良いのです。
合理的に物事を考え無駄がないので、自然と生活に余裕がある感じを人に与えているわけですね。
色々な玄関を見てきて思うのは、入り口や始まりを大切にする人はその後の生活や暮らしにもの凄く安定感と言うか落ち着きを感じさせます。
せわしなくいつも何かに追われているようなイライラしている感じが伝わってくるのは、職業などを聞いてもおそらくお金を稼げているはずの人だったりします。
もちろん、そのご家庭の内情奥深くまでは分かりませんし、お金を稼げているご家庭でなおかつ玄関が綺麗な家もあるでしょう。
でもトータルで思い返してみると、訪問して気持ちのいい玄関と言うのはお金の量に比例するわけではなかったような気がします。
先日ある人の紹介で訪問したご家庭が、長年のサラリーマン生活を終え、年金のみでこれからのリタイア生活を送られようとしているかたでした。
雑談がてらに投資のお話をしてみると、少しの貯えから勉強しながらやってみると微笑んでおっしゃっていました。
この家の玄関が凄かった。
家自体は敷地面積で100㎡前後くらいの大きさで、玄関フードが付いていました。
ただこの玄関フードにあれだけ物を置かない家を初めて見たのです。
玄関フードとは玄関ドアよりも前に付いている除雪用の出入り口です。
そこそこ広い玄関フードを開けて玄関ドアから中に入ると、本当に風が吹くように迎え入れてくれるような空間が広がります。
「空間が広がる」と書くと広々とした玄関を思い浮かべるかもしれません。
しかし広さはごく普通の玄関で、まっすぐ進むとすぐにトイレと物置部屋のドアが2枚並んでいるごく普通のお宅です。
リビングは玄関を上がってすぐ右に折れた先にあるのに、玄関だけで既に開放感があるのです。
先ほど書いた通り、今後が「本当に」年金だけの生活となるのであれば、それほど生活は楽ではないかもしれませんし、それこそ少し貯えた資産を運用する必要性が出てくるかもしれません。
でも実際は「本当に?」と疑ってしまうくらい佇まいに余裕の感じられる人でしたね。
元々きちんと片付けて極力物を置かない生活をされてきたのか、意識してそのような物を置かない生活をしているのか分かりません。
ただ他に見てきた玄関が綺麗な家と同じような雰囲気を感じて、それはもちろん好感でしかなかったのです。
何か物に追われている、時間に追われている、何だか分からないけどうまく行かない、などと感じている場合は先に玄関周りを確認してみるといいかもしれません。
いつの間にか雑然とした風景になっていませんか?
郵便物がたくさん貯まって下駄箱の上に放り投げてあったり、どこかで買ったお土産の置物がたくさん並んでいたりするのであれば、少し片付けてみると気持ちも変わり、普段の生活にもいい影響が生まれるかもしれませんね。