「複利」という言葉があります。
普段、何かしらの投資を行っている人や投資に興味がある人であれば、良く聞く言葉だと思います。
念のため、「複利」で押さえておきたいポイントを挙げておくと以下のようになります。
複利のポイント
- 成長の加速
- 時間の価値
- 積立投資の重要性
元本に獲得した利息を加えて元本を常に大きくして獲得できる利息を最大化する「複利」で重要なのは、「成長の加速が増すのは後半である」点と「時間がかかる」点です。
簡単に言えば「すぐに成果が分からない」のですね。
そのため、理論的には分かりやすいお話なのですが、いざ実践するとなると中々続かないものなのです。
そして時間がかかるため、元本をさらに大きくするための「積立」と言う考えも重要になるのですが、なにぶん地味なため、一発逆転を狙う(一瞬で億り人的な)ギャンブル的投機を好む層には人気がありません。
「複利」を生かすためにどのようにポートフォリオを構築したらいいかなどの話はまた別の機会にするとして、今回はこの「複利」がどれだけ強力なのかを知るための例え話とその動きを実際にエクセルを使って確認してみたいと思います。
「1億円」と「1円玉」どちらをもらう?!
さて、このタイトルのようにあなたなら「1億円」と「1円玉」のどちらをもらいますか?
もちろん、「1億円」ですよね。
しかし、この「1円玉」は特殊な能力を持っていて、以下のような条件で自動的に増えていきます。
1円玉の特殊な能力
次の日になると勝手に現状の2倍に増えていく。ただし、30日間限定。
勝手に増えていく「1円玉」、いいですよね。
でも、1カ月間(30日)限定の能力なので永遠ではありません。
それではもう一度お伺いします。
あなたなら「1億円」と「1円玉」のどちらをもらいますか?
ちなみに、この特殊能力を持った「1円玉」であっても、最初の10日間では小学校低学年のお小遣い程度にしか増えません。
さあ、それでは3秒でお答えください。
インフレの世の中ですが1億円あれば十分潤うし、「1億円もらっておこうかな」と言うかたが多いかもしれませんね。
いくら2倍に増えていくとは言え、1カ月だけだしなぁ・・・
それでは、この結果をエクセルで確認してみましょう。
自分で実際にエクセルに数式を入力して確認してもいいですし、面倒くさければ以下、画像付きで説明していますのでご覧ください。
エクセルで計算すると・・・
まずは、1行目に「1」を入力し、2行目に以下のような数式を入力します。
2行目の結果が「2」となりました。つまり、2日目には2円になったわけです。
そのまま10日目(10行目)までセルのフィルハンドルでコピーしていきます。
10日目には、2倍ずつ順調に増えていった1円玉が512円になりました。
「特殊な1円玉」を選んだかた、やばいっすねー(笑)
『やっぱり、1億円選んでおけばよかった』
と後悔の声が聞こえそうです。
では、20日まで見ていきましょう。
次の10日で約52万円まで増えました。
最初の10日間の増え方に比べたら、ちょっと期待できる増え方じゃないですか?
しかし、それでも1億には程遠いですよね・・・。
後、10日しかないのに・・。
それでは、最後の10日間を見てみましょう。
・・・最後の3日間で5億増えています(笑)
はい、27日間であれば「1億円」もらった方が正解でしたが、1カ月間(30日間)であれば「特殊な1円玉」の方が得になる、と言う結果になりました。
グラフにしてみました。
最後の5日間くらいでの加速が半端ないですね。
これが、複利のポイントで挙げた「成長の加速」と「時間の価値」になります。
今回の例では、1日で倍に増えたり、期間が30日だったりと実際の複利の投資環境ではありえないスピードでご紹介しました。
では、実際の”あり得る”投資環境ではどのような増え方になるでしょうか?
同じくエクセルで確認してみたいと思います。
大事なのは3点
初期投資額と年利での計算方法にしてみたのが以下のリストになります。
最初に持っているお金が1,000,000円の場合と10,000,000円の場合に20年間毎年7%の利率で利息収入があるとして複利でどのくらい増えるかをリスト化したものになります。
20年かけて結構な額になりましたね。
ここで大事なのは3点です。
- 初期にいくら用意できるか
- 始める年齢はいくつか
- 年率をどれくらいで考えるか
非常にシンプルで、この3点と後で説明する1点の計4点でしか、金融資産を増加させる手立てはありません。
それでは、順番に見ていきましょう。
初期にいくら用意できるか
これは、先ほどのリストで言えば、1,000,000円用意できるか10,000,000円用意できるかなどの違いとなります。
20年後の結果を見ても分かるように、用意できる金融資産が多ければ多いほど利率が一定であれば増え方も大きくなります。
高齢のかたで投資未経験の場合に「年齢が高くても投資をやって大丈夫か?」と悩むかたに対して、投資の助言をする立場の人たちが「大丈夫」と答える場面をよく目にしますが、ある程度初期投資できる資産があるという前提条件は必要になると思います。
初期投資額は、若いかたより年配のかたの方が有利に働く可能性は高いでしょう。
始める年齢はいくつか
投資を始める年齢が早ければ早いほど時間を最大化できるので、こちらは若いかたの方が有利になります。
リストは20年で作成しましたが、当然20歳くらいから始めれば40年・50年という期間で考えられます。
もし、中年から高齢のかたであれば時間を使えない分、先ほど見たように初期投資に掛ける金額を増やすか、次にお話するように勉強量を増やし年率を上げるか、またその両方を考えなければなりません。
年率をどれくらいで考えるか
これは、若いかたでも高齢のかたでも同じ土俵で勝負できる唯一の方法となります。
ポートフォリオを金融資産、不動産などの「資産別」や株、ETF、投信、債券、そしてそれらと絡めてオプションなどのリスクヘッジも含めた「金融種別」、ITやエネルギーなどの「セクター別」を吟味しながら、年間で獲得できる資産を最大化します。
リストは、年間の利率7%で計算しましたが、10%前後まで引き上げられれば優秀で、悪ければ2%~3%くらいに落ち込む場合もあります。
前述の2点は「初期投資額をこれだけ用意しよう」や「30歳になったら投資を始めよう」などと自分の意志で決められますが、自分の意志だけではどうにもならないのがこの年率部分でもあります。
そのために有料で情報を仕入れるなど、経費をかける必要も出てくるでしょう。
途中で資産をプラスする(積立)
途中で資産をプラスすると、資産の増え方がさらに大きくなります。
リストに、3年おきに100万円を追加投入した場合の資産の増え方を加えてみました。
20年で考えた場合に途中6回、合計600万円を追加投入するとさらに大幅に増えているのが分かります。
途中で調整できるのが、「想定する年率」と「積み立てる金額」になるので、これらは資産を増やすために常に考えておかなければならないものになります。
まとめ
日々2倍増えていく1円玉のような急激なスピードアップは実感できなかったかもしれませんが、複利の効果は長くやればやるほどその威力を発揮します。
ポートフォリオ内に、投機的な部分が少し入っているくらいであれば別に構わないと思いますが、それとは別に複利による資産構築も含めておく必要があるのは言うまでもありません。
積立も併用するため地味な作業と感じるかたも多いですが、計画性をもって投資を行いたい人には是非活用してほしい方法となります。