先日、ロイターに以下のようなニュースが掲載されていました。
「世界の債務は320兆ドルを超える」
ちなみに320兆ドルというのは、日本円にすると「5京円」になります。
兆の次が京になります。10の16乗ですね。
国際金融協会(IIF)の報告書によると、世界のGDPに対する債務比率が約326%なので、世界の人々が稼ぐお金の3年分以上の借金があると言う計算になります。
これによる影響は、新興国に多く見られ、新興国通貨はデフォルト危機に陥る可能性が高くなり通貨としての信頼を失っていきます。
そもそも通貨というのはどのような役割があるのでしょうか。
- 携帯性
- 可分性
- 耐久性
- 互換性
携帯性
携帯性とは、つまりいつでもどこにでも持ち運びができる利便性を言います。
現代で言えば、米ドルや円、ユーロなど紙幣や硬貨などを持ち歩いて、商品やサービスとすぐに交換できるようになっています。
例えば、Aという国の通貨の信用がなくなれば、A国の人々は商品やサービスを手に入れるときに物と交換するようになります。
いわゆる物々交換ですね。
動物の毛皮や穀物、貝殻など携帯性には不向きとなります。
可分性
可分性とは、価値を損なわずに物質を細かく分割できる点を言います。
通貨で言えば、10,000円を「100円×100個」に分割しても円の価値は変わらず、10,000円となります。
耐久性
数十年前に作られた硬貨や紙幣であっても、腐ったり価値が無くなったりせず通貨は古くなっても利用できる耐久性があります。
互換性
日本円が使える日本中のどの場所に行っても、100円は100円の価値があり、10,000円は10,000円の価値があります。
つまり、価値に見合うだけの商品やサービスをどこにいても同じ量の通貨で手に入れられる互換性があります。
さて、通貨と同じような言葉に「貨幣」があります。
通貨が「Currency」であれば、貨幣は「Money」になります。
では、貨幣とは一体何なのか・・?
それは、先ほど挙げた4つの定義に「保存性」をプラスします。
例えば、金や銀のようにそれ自体に価値があり、持っているだけで価値を保存できるものを言います。
通貨には価値を保存する機能がないので、実は米ドルや日本円などのお札や硬貨には通貨以上の価値はないに等しいのですね。
日本円が誕生した明治15年ごろの1円の価値と比較すると、現在の1円は15,000分の1の価値しかありません。
このように通貨の価値が下がってしまうのはなぜか?
それは、インフレが発生するからです。
物価が上がってしまったために、相対的に通貨の価値が下がってしまうのもインフレですが、もう一つのインフレの性質を挙げるとすれば、それは「通貨供給量に対して需要が減る」点です。
このように各国で発行されてきた多くの通貨は、通貨の価値が下がる要因であるインフレによって価値を失ってきました。
しかし、金や銀などの貨幣は採掘量に限りがあるので、その価値を維持しながら世界中のどこでも同じ価値のものとして存在します。
さて、米国株投資を勧められる場合に、よく言われるのが「米国株は右肩上がりにずっと成長してきている」というものです。
この右肩上がりと比較されているものは実はインフレによって価値の下がる「米ドル」であり、米ドルの価値が下がったために、相対的に米国株の価値は上昇してきたのです。
では、価値を保存できる「金」と比較するとどのようになるかと言うと、米国株の価値はむしろ下がっているのです。
勘違いしないで頂きたいのは、米国株や日本株を主体にした投資手法は間違っているというわけではありません。
ただ、「通貨」を増やす投資だけを追い求めるのではなく、ポートフォリオにはやはり何らかの形で「貨幣」を含めておく必要があると思うのです。
冒頭の債務超過は正に、無限に刷ってきた米ドルの価値を下げ続けた結果を反映しているのかもしれませんね。
いつの時代もそうなのですが、「通貨」が溢れるこの世の中では、常に「貨幣」の重要性が高まっていくのです。