前回は投資で一番耳にするかもしれない指標である「利回り」についてお話しました。
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[リスクに違いのある金融商品では比較できない][数字が大きければいいわけではない]よく使う利回りとは
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今回は利回りとは別に、覚えておいた方がいい指標である「配当性向」についてお話してみたいと思います。
利回りは業績悪化でも上がる
まずは前回のおさらいを簡単にしておきたいと思います。
「利回り」とは投資元本に対する「インカムゲイン(利息などの収入)」がいくらになったかを図る指標でした。
例えば1,000円の価値がある資産が、1年間で10円の利息を生むのであれば「10÷1,000=0.01」、つまり利回り1%となります。
この資産が900円の価値しかなくなっても、頑張って1年間で10円の利息を生んでくれたのであれば「10÷900=0.011」、利回りは1.1%へと上昇するのです。
これは企業に置き換えると、業績が悪くなり企業価値が下がったのに配当利回りは上昇したと言えます。
株式などの証券や不動産というのは、このような価格変動リスクやその他の様々なリスクがあるため、一概に利回りが上昇したからと言ってその元本となる資産が優秀だとは限らない、というお話でしたね。
では、本当に良い利回りの資産を探すためにはどのような数字に注目すればよいのでしょうか。
資産を「株式の銘柄」で考えてみたいと思います。
よい利回りの銘柄とは
企業の業績が悪くなると、これまで支払っていた同じ配当額を支払うのが厳しくなるため、配当額を下げる確率が高まります。
いわゆる「減配」と呼ばれ、前期は1株50円の配当金を払っていたのに今期は1株30円しか払わなくなった、などの状態を言います。
前期の株価が1,000円であれば、50円の配当を支払うと利回りは5%になります。
業績が下がってもし今期の株価が600円になってしまったら、配当を30円に下げたとしても今期の利回りは前期と同じ5%になります。
利回りは同じレベルに保てても、その実態は株価も下がって配当も下がってしまった魅力の薄れた銘柄になっている可能性があるわけですね。
ただし株価の下落というものは企業の業績だけで下がるものではないので、ファンダメンタルで相場全体が下がる時はつられて下がってしまう場合もあるでしょう。
そこで注目したいのが配当額を下げた理由が企業の業績悪化によるものなのかどうかです。
配当を現状維持で支払えているかどうか、少なくともその支払っている配当額は現状の企業業績と比較して妥当かどうかが重要になってきます。
このような時に見ておきたい指標があり、それが「配当性向」となるのです。
配当性向とは
配当利回りと似たような言葉で「配当性向」があるのですが、これは企業の純利益からどれくらい配当を支払えているかを見る指標になります。
この指標は相場全体や企業の株価に左右されず、企業が計上した利益と配当額によって計算されるので「利益が出ているのに配当をケチっている」のも分かれば、「利益が少ないのに無理して配当を支払っている」のも分かってしまうので、特に配当重視の投資家にとっては重要な数値をはじき出してくれます。
つまり、株価が上がって成長していても適正な配当を支払っているか、株価が下がっても減配リスクのない適正な配当を支払っているかがある程度は読み取れるようになります。
例えば当期純利益が1,000,000円だったとします。
支払う配当金総額は300,000円でした。
この場合は、「300,000÷1,000,000=0.3」となり、利益の30%が配当金として株主に支払われています。
配当性向は30%~70%くらいが妥当だと言われているので、この場合は利益に対して適正な配当金を支払っていると言っていいでしょう。
大企業だと数値はもっと大きいのですが例なのでご容赦ください
全体の相場が下落していてこの企業の株価がつられて下落したとしても、株価ではなく企業が生み出した純利益と配当額を比較しているので、企業が適正に配当を支払っているかが分かるのです。
これが同じ1,000,000円の純利益で配当金総額が100,000円だったとしたら、配当性向は10%になりますので、利益に対して支払っている配当額が低すぎるわけですね。
一方でもし純利益が1,000,000円しかないのに、配当金総額に800,000円も支払っていたら80%の配当性向となり配当を支払うのに無理している状態となります。
配当を維持するために必要なのは現金
先ほどの企業が1,000,000円の純利益から次の期に800,000円の純利益に業績が落ちた場合、配当額を維持するために必要なのは「現金」です。
本来は当期に稼いだ利益から配当を支払うのですが、業績が落ちると利益が少なくなります。
しかし配当額を維持するためにはそれまで蓄積してきた利益、つまり現金を使って支払っていく必要があります。
企業の決算書で貸借対照表の「利益剰余金」を確認したり、キャッシュフロー表などを確認したりして多少の業績悪化でも配当が今後も適正に支払えるかどうかを判断します。
将来の配当に回せる内部に留保された割合を示す「内部留保率」も見ながら判断していくわけですが、まずは配当利回りでは判断できない適正な配当支払いを計算するための指標である「配当性向」は覚えておきたい指標となるでしょう。
(まとめ)配当性向は覚えたい
配当利回りでは配当銘柄が適正な配当を支払っているかどうかを判断できないので、その場合は「配当性向」という指標で見るようにしましょう。
利回りと違って、決算書を読み解く力が必要になる「配当性向」や決算書の数字などは中々覚えづらいかもしれませんが、配当投資に重点を置くのであれば「配当性向」は必須の指標となります。
一般的に成熟した企業や利益が安定している企業は配当性向が高くなる傾向があり、成長期の企業や将来への投資を重視する企業は配当性向が低くなる傾向があるので合わせて覚えておいてください。