今回もあのAさんのお話です。
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実はこのAさんについては、”失敗したなぁ”と反省している点があります。
それはこんなにAさんが当サイトに登場してくる予定ではなかったので、仮の名前をもっと人間の名前っぽくしておけば良かったな、と(笑)
今回の話で、もうおそらく登場してこないと思いますから、とりあえずAさんのままで行きたいと思います。
年を取ってから母親からの遺産を受け取り、投資は未経験の状況から何かを学ぼうと色々と筆者に相談に来たあのAさんです。
これまでのAさんのお話を読んでいない場合は、上のリンクからどうぞお願いいたします。
さて、今回は実際に被害に遭ったわけではないのですが、これまたAさんが実際にやろうと検討していた投資商品になります。
それが集団訴訟を起こされて、現在話題となっている「みんなで大家さん」なのです。
「不動産特定共同事業」に基づいて運用されている投資商品で、多くの投資家から多額の投資資金をかき集めていましたね。
Aさんにまつわるお話を初めて当サイトで披露したのは、遺産を相続したところからでした。
そしてその際にも少し触れたのが不動産についてです。
Aさん自身は投資に縁がなかったのに、図らずも相続した資産の中には土地ばかりの不動産も含まれていたのです。
元々投資に興味がなく、相続でもしなければ土地のオーナーになるはずがなかったAさんは、2年くらい前の相続してすぐの頃、この不動産投資についても筆者と意見を交わしていました。
「みんなで大家さん」は〇〇な感じがする
先に言っておくと、Aさんは「みんなで大家さん」に少し興味を持っていました。
それは投資商品に対する興味と言うより、その仕組みに対する興味でした。
2年くらい前にAさんの相続が完了し、色々投資に関する話をしていた時に、こんな会話がありました。

僚ちゃん、そう言えば最近よくきく不動産投資を知っているかい?みんなで1つの不動産を買って、買った人にはそれぞれ賃料収入が入るらしいんだ。名前何て言ったっけなぁ?
あぁ、「みんなで大家さん」かな?知っているよ、特定の不動産に対する投資商品だね。凄いね、土地だけじゃ満足できず建物も購入するつもりなんだ。よっぽど相続したお金で潤ったんだね。


あっ、いや・・ハハハ・・じゃぁね。
冗談だよ。でも、どうしたの?「みんなで大家さん」が気になっているの?


う~ん、何となくさ、説明とか読んでみると結構楽そうでいいかなぁと思って。
楽とは?


出資すれば後は出資した分の賃料が配当として入ってくるだけで、建物の管理とかいらないみたいなんだ。配当金も10%弱あるみたいだし。この前引き継いだ土地を売って、こっちの「みんなで」の方に切り替えた方が定期的な収入もあって、楽に稼げるんじゃないかな、と思ったんだよ。
えーっと・・・、その特定の建物が必ず埋まって常に賃貸料が発生するという保証のある物件なんだね。


あっ、いや常にと言われるとどうなんだろうなぁ?でも結構一等地のビルも多いみたいだから。
ふ~ん、まぁいいんじゃない。Aさんも自分のお金で投資するんだから・・やってみれば。


なんか冷たいなぁ(笑)僚ちゃんも一緒にどうだい?
やらな~い。そこにお金をつぎ込むくらいなら、REITを買うかなぁ。


あれ?!これってREITではないのかい?
結構時間が経っているので細かい話は覚えていないですけど、だいたい上のような会話をしたと思います。
温度感では、Aさんが少し熱を帯びていて、筆者が冷めきっているのがお分かりいただけるでしょう(笑)
まずこの項のタイトルである「みんなで大家さんは〇〇な感じがする」というのは、そうですね。「楽」な感じがするとAさんは言うわけです。
「楽」に思うというのは、リスクを相手任せにして自分は美味しいところだけを持っていこうと言う意味にもなります。
確かに実物の不動産を持つより、投資商品の方が楽ではあります。
Aさんもそう思ったのでしょう。
しかしあの時、筆者は以下の理由で「みんなで大家さん」に投資しようとは思いませんでした。
- いつでも換金できない
- 投資する不動産が決まっている
- 不動産のオーナーになるわけではない→REITでもいい
では順番に見ていきましょう。
いつでも換金できない
「みんなで大家さん」は、投資対象の不動産に投資をすると途中で投資資金を戻せません。
これがREITのような投資商品であれば、いつでも換金できるので、不動産収益のパフォーマンスによっては途中で違う銘柄に入れ替えてもいいわけです。
つまり自由が利かないのは任せっぱなしで楽である一方、不測の事態の時に身動きが取れないと言う意味でもあるのです。
投資する不動産が決まっている
投資する対象の不動産が決まっていると言うのは、パフォーマンスがずっと良ければそれでも問題はないでしょう。
しかしREITであればパフォーマンスが悪くなった際に、投資対象を見直して利益を最大化するために力を入れてくれます。
「みんなの大家さん」だと、REITのように保有している物件の入れ替えを行うなど柔軟な対応ができないだろう、と思ったのです。
不動産のオーナーになるわけではない→REITでもいい
これらの理由から、もし投資会社が投資家からお金を集め、不動産を購入して賃料収入を目指すのであれば、REITでも全然いいのです。
REITという優れた不動産投資信託があるのに、わざわざ「みんなで大家さん」のような形態の投資商品を持つ必要はない、と筆者は考えたわけです。
不動産のオーナーにならないのは、REITも「みんなで大家さん」も同じです。
「みんなで大家さん」が公開している物件や物件の場所が好きなのであればまだしも、同じような不動産投資で収益を得ようと思うのなら、小口からいつでも換金でき投資対象も柔軟に変更できるREITでいいと結論付けたわけです。
元本保証がないのは同じなのに
筆者が「遠慮しておく」理由として先ほど挙げた3つの点を話すと、Aさんはいくぶん温度が下がったようでした。

僚ちゃん、なんだかよくよく聞いてみると、「大家さん」はなんだか出資金だけ高くて確かに出資後は柔軟性に欠けるなぁ。
簡単に言えばこちらは運営会社にお金を渡して、後は人任せ状態。収益が出たら出資金に応じた配当をくれるかもしれないけど、それはいわゆる出資金を人質に出している状態で、不動産からの収益が発生しなければ配当も出ない、出資金も返ってこないと言う可能性もあるからね。


そうだよな、何となくREITのつもりでいたんだけど。と言ってもREITだってよく分かってないんだけどさ。
投資商品なんだから元本保証がないのは、REITも大家もおんなじ。ただREITというのは流動性があるから、投資額だって好きに決められるし、「このREITは危ない、投資資金を引き上げよう」と思えばいつでもできる。株の取引きと同じわけだから。元本保証がないからなおさら引き際や追加投資は自分のタイミングで決めたいのに、それさえ許されない。つまりそれが人質って言う意味だね。


楽に配当が稼げる・・と思ったのが間違いだったな。
自分で不動産の物件を管理しなくていい、という点では確かにどちらも楽かもしれないけど、この大家さんはREITとは性質が違うんだよね。


・・本当だわ・・。
だからやるなら自己責任でやったらいいと思う。まぁ一つ言えば余裕資金の何分の1程度に抑えた方がいいと思うけどね。まぁ今のAさんならそれでもウン千万円とかかな?


そんなわけあるかい。いやぁ、聞いといて良かったよ。
Aさんは「元本保証がない」という言葉を聞いて、改めてハッとしたようでした。
「みんなで大家さん」の場合、出資金を相手の会社に渡したら、その後は「配当金を受け取るだけ」になります。
投資というのは元本保証がありませんから、保証されていない元本額を自分の自由に増やしたり戻したりできないのはリスクでしかありません。
Aさんはこの時、配当金のパーセンテージと定期収入という言葉だけに惹かれてしまい、大元の元本金がどう扱われるか、そして配当金が払われないリスクがある可能性には目が向かなかったわけですね。
(まとめ)あの時が教訓となって
25年7月末に、該当不動産物件の配当金の遅配が始まった「みんなで大家さん」は、3か月経って投資家から訴訟を起こされました。
最近Aさんとは連絡を取っていないため、このニュースを聞いて何を思っているかは分かりません(その内何か言ってくるかもしれませんけどね)。
あの時・・・
最後に一つだけAさんに話していたのは、「お金に余裕がある時こそ、間違った方向に進みやすい」という内容です。
今回のお話であればAさんは「これは楽な投資だ。お金はあるし、やってみるか!」となっていたわけです。
「自分で自分のお金を管理する」
冷静に考えればそんなのは当たり前なのです。でもAさんは出資しようとしていた・・。
「よく分からないけど、出資すれば配当金がいい感じで手に入る」
そう考えてしまったAさんに、「よく分からない時点で手を出すべきではない。」と伝えました。
「お金に余裕がなければやろうとも思わないでしょ。お金に余裕がある時こそ、十分に気をつけて」と話しをしてその時は終わりました。
そう、この経験から2年弱たって発生したのが前回の保険営業マンのお話です。
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この教訓があったからこそ、保険営業マンが持ってきた怪しい不動産話にAさんはきっちり胡散臭いと思えたのではないか、と筆者は密かに満足しているのです(笑)



