投資信託の値段である「基準価額」では、その投資信託が優れているか否か、つまり投資信託の運用実績を判断できない
というお話を前回にしました。
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では、投資信託の優劣はどのデータからも判断できないのでしょうか・・・。
そこで、確認したい指標が「騰落率」になります。
騰落率とは
「騰落率」とは、投資信託(以降、ファンド)が一定期間内にどれぐらい値上がりしたか、または値下がりしたかの変動率を表すデータとなります。
期間は、おおむね3年から5年の間で比較するのがベストと言えるでしょう。
ただし、注意したい点が3つほどあります。
注意点
- 期間を「設定来」で比較しない
- 分配金のあるファンドでは、分配金を出さなかった場合の基準価額で計算する
- 投資対象を同じにする
それでは、順番に見ていきましょう。
期間を「設定来」で比較しない
前回もお話しましたが、ファンドの運用が開始された日となる「設定日」が異なるファンド同士を比較しても意味がありません。
「設定日」から4年間運用している”A”というファンドと「設定日」から5年間運用している”B”というファンドを比較する際に、「設定来」の変動率だと4年と5年で運用期間が異なるので、「設定来」の騰落率は無視して構いません。
※ただし、同じ設定日であればこの限りではありません。
「騰落率」の指標は、以下のように設定日からの全期間を確認できる場合も多いです。
上の画像は、あるファンドの月次レポート内の「騰落率」が載っているページを表示しています。
現在(月次レポート作成日)から1ヶ月、3ヶ月・・と各期間の騰落率が載っていて、最後に「設定来」が表示されていますね。
「設定来」が一番長い期間になるわけですが、設定日が異なる(今日現在までの期間が異なる)ファンドを比較しても意味がないので、運用期間は同じ期間で比較するようにします。
「設定来」を除けば、「3年」から「5年」のような少し長めの期間を確認するといいでしょう。
もちろん、ファンドが新しくできたばかりであれば、「1年」や「3年」などの年単位の期間がない場合もあります。
月次レポートや報告書はどこに?
各ファンドの「報告書」などのデータは、銀行や証券会社のようないわゆる「投資信託の販売会社」のページで確認できます。
「報告書」を作成しているのは、ファンドを運用している「運用(委託)会社」です。
上の画面は、楽天証券のあるファンドの画面ですが、「運用(委託)会社」が作成している「運用報告書」や「月次レポート」で「騰落率」を確認できます。
しかし、この場合は報告書等作成日が基準となった変動率なので、最新データではありません。
上の画面は、SBI証券のあるファンドの画面です。
「販売会社」(この場合SBI証券)のページ内で、毎日の基準価額から常に最新の「騰落率」を確認できるようになっています。
「運用(委託)会社」も「販売会社」も「騰落率」を公開してくれますが、今回の2つの「販売会社」の「騰落率の表示」だけを比較した際には、SBI証券の方が親切かもしれませんね。
分配金のあるファンドの基準価額に注意
分配金を毎月なり、年1回なり定期的に配分するファンドは、ファンドの運用資金である「純資産総額」の一部を取り崩して支払います。
つまり、その分「基準価額」も減少してしまうので、同じ期間、同じ投資対象のファンド同士を比較しても、分配金の有無によってファンドの優劣を比較できなくなりました。
では、「騰落率」で比較したらどうなるのか・・・
というとやはり比較するどのファンドもすべて「分配金が支払われなかった」という体裁で比較する必要があります。
例えば、次の画像のような毎月分配金のあるファンドがあります。この月次レポートを見てみましょう。
このファンドの「騰落率」が表示されています。
一番下の注意書きに、この「騰落率」が「分配金(税引き前)を再投資したものとして計算している」と書かれていますね。
これはつまり、「分配金を支払わなかったと仮定して計算している」という意味になります。
このように分配金を取り除いた「騰落率」であれば、他の「同じ投資対象」、「同じ期間」の分配金のないファンドと比較できるようになるわけですね。
投資先タイプを同じにする
これは前回の「基準価額」のお話でもありましたが、「投資対象」を同じにする必要があります。
一方が「インデックス型」のファンドなのに、もう一方が「アクティブ型」だったり、一方が「公社債」にしか投資していないファンドなのに、もう一方が「株式」ばかりに投資していたり、これらのような投資対象が異なるファンドで「騰落率」を比較しても意味がありません。
上の画像のように、報告書等にはどの配分でどういった銘柄に資産を投入しているのかが分かるようになっています。
ファンドを「騰落率」で比較する際には、このような投資対象も注視して同等のものを比較するようにしましょう。
シャープレシオも使う
もし、比較したファンド同士の「騰落率」が同じような場合は、「シャープレシオ」という指標を確認してみます。
シャープレシオとは
「運用成果」に対して、どれだけのリスクを取っているかを判断する指標となります。
シャープレシオ≒運用成果÷リスク
「運用成果」は、リスクのある資産の利回りから無リスク資産の利回りを引いたものになります。
同じ「運用成果」であっても、リスクの度合いが少なければ、つまりシャープレシオの数値が高ければ、そのファンドは「効率よく運用できている」という結果になります。
「シャープレシオ」もファンドの販売会社(銀行や証券会社)の各ファンドの個別ページに載っています。
同じファンドでも、販売会社ごとの「いつ時点の計算か」によって数値も多少変わってきます。
ファンド同士を比較する場合は、同じ販売会社内で比較した方がいいでしょう。
まとめファンドの比較方法
さて、今回は「騰落率」と「シャープレシオ」がファンドを比較できる指標であると分かりました。
「騰落率」は比較する際に注意点がありましたが、2つの指標とも販売会社の各ファンドのページ内で確認できます。
これまで、あまりこういった指標を見ないで買ってきた・・・という方は、是非参考にしてみてください。