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さて、今回は、”ぱっ”と見た時に一番目に付く「投資信託(ファンド)の名前」についてです。
株式や債券、リート(不動産投資信託)などの「タイプ別の分散投資」や日本、先進国、新興国などの「地域別の分散投資」などを手軽に配分できるのがファンドのいいところですが、ファンドの名前だけで”地域分散ができている!”と安心するのは早いかもしれません。
eMAXISシリーズ
インデックスファンドで投資家たちから絶大な人気を誇る「eMAXIS」シリーズをご存じでしょうか。
運用会社・管理会社とも「三菱UFJフィナンシャルグループ」が務め、多種多様なインデックスファンドやアクティブファンドが「eMAXIS」シリーズとして販売されています。
現在、楽天証券では、購入額の多い上位30本のファンドの内、実に8本が「eMAXIS」シリーズで占められています。
例えば、米国株式の指数である「S&P500」に連動した収益を目指す、「eMAXISSlim 米国株式(S&P500)」やMSCIオールカントリー・ワールド・インデックスに連動する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などは保有されている方も多いでしょう。
”人気の高い「eMAXIS」シリーズをいくつか持っておけば、分散効果も簡単に期待できそうだし安心できる”
と考えそうですが、実は「eMAXIS」シリーズも保有の仕方によっては、分散効果が薄まってしまう場合もあるのです。
米国株式や全世界、バランス、リート(不動産投資信託)などタイプ・地域とも分散効果のありそうなファンドがたくさんあるのに、なぜ効果が薄れてしまうのか・・。
仮に、各地域に分散させたいと思い、以下の3つのファンドを購入していたとしましょう。
- eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
- eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)
名前だけを見ると「日本を除く世界中の国(先進国・新興国)」、「先進国全般」、「日本だけ」という広い分散投資ができそうな気がします。
しかし、実はこの3つを購入した際の投資先地域は以下のようになります。
米国 | 日本 | その他 先進国 | 新興国 | |
---|---|---|---|---|
全世界株式(除く日本) | 64.9% | 0% | 23.4% | 11.7% |
先進国株式インデックス | 73.5% | 0% | 26.5% | 0% |
国内株式(日経平均) | 0% | 100% | 0% | 0% | 合計 | 138.4% | 100% | 49.9% | 11.7% |
「全世界株式」も「先進国株式」も米国への投資量が圧倒的に多くなっていますね。
それに比べてイギリスやフランス、ドイツ、カナダといった日本以外の先進国や新興国への投資量が少なくなってしまうのです。
新興国の保有割合を増やすなら「eMAXIS Slim 新興国株式インデックス」も組み入れると、新興国の比率はだいぶ増えますが、結局米国以外の海外先進国の保有量はそれほど増えませんね。
ちなみに、資産タイプを株式や債券、リートなど幅広く分散できる「eMAXIS Slim バランス(4資産均等型)」は、運用資産の8割以上を日本円と米ドルで管理しています。
グローバル
”幅広い地域に分散投資をする”という意味では、ファンド名に「グローバル」と付くものも勘違いしやすい名前になりそうです。
ニッセイグローバルリートインデックスファンド
例えば、「ニッセイグローバルリートインデックスファンド」は、日本を除いて海外のリートに為替ヘッジなしで投資するファンドとなります。
為替ヘッジなしとは
ヘッジコストはかからないが、円高局面では基準価額が減少する要因となる。
ヘッジコストは余計にかかるが、ファンドへの為替の影響を取り除きたい場合は、「為替ヘッジあり」を選ぶ。
ただし、「為替ヘッジあり」の場合、円安局面での為替差益が手に入らない。
この地域別の分散具合は、以下のようになります。
- 北米76.5%
- 欧州9.7%
- アジア・オセアニア・その他7.2%
4分の3以上は、アメリカとカナダの北米で占められています。
また、先進国が9割弱なので、新興国のカントリーリスクや為替変動リスクはそれほど影響がないでしょう。
リスクとは
投資対象の国の社会や経済情勢が不安定になるリスク。
政治や経済が脆弱になって、その国の通貨価値が下落、債券の債務不履行やデフォルト(支払い遅延)などが起こる確率が高くなる。
■為替変動リスク
為替ヘッジをしないので、円高による「為替差損」が発生する可能性がある。
特に「グローバル」と謳うリート型に関しては、インデックスファンドの場合に、ほぼ北米地域(おおよそアメリカ)のリートに投資されます。
「アクティブ運用のリート」で少し分散色が強まるファンドもありますが、それでもアメリカが半分ほどを占めているのがほとんどでしょう。
SMT グローバル株式インデックス・オープン
もう一つ、今度は”グローバルな”株式に投資する「SMT グローバル株式インデックス・オープン」を見てみましょう。
このファンドも同じように、名前だけを見るとグローバルな株式に投資するように見えますが、実際は、以下のような投資比率になります。
- 北米76.8%
- 欧州19.3%
- アジア・オセアニア・その他3.9%
やはり、どうしても北米地域への投資額が圧倒的に多くなっています。
こう見てみると、結構どのファンドも米国に偏っているのが分かりますね。
ファンドの積立などで買い増ししていくなら、米国だけでなく、日本や欧州、オーストラリアなどの先進国への分散投資も意識しておきたいところです。
一口に、「グローバル」と言っても世界均等ではないという認識は持っていたいものですね。
まとめレポートや目論見書は重要
今回のお話で見えてくるのは、やはり運用会社が報告している「月次レポート」や購入前の「目論見書」に目を通す必要性ですね。
分散投資を心がけるなら、最低限どういった地域のどのような資産に投資をされているのかは、把握しておいた方がよいでしょう。
『自分が保有しているファンドの中身が北米地域に偏っているなぁ』という場合には、投資対象をあらかじめ「欧州」や「アジア」などに絞ってファンドを探してみてください。
ファンド名に絡んだ似たようなお話で、内容が少し難しめの話題はこちらにありますから是非読んでみてください。
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