前回、ぱっと目に付く「ファンドの名前」だけで、そのファンドの投資先や投資対象を判断してはいけない、というお話をしました。
こちらもCHECK
誰も教えてくれない投資信託の落とし穴―その4(名前で判断していい?)―
前回、投資信託に関わる「販売会社」、「委託会社(運用会社)」、「受託会社(管理会社)」の内、1つもしくは全部の会社が経営破綻した場合の資産の行く先について解説しました。 さて、今回は、”ぱっ”と見た時 ...
続きを見る
今回は、初心者向きと言われる「バランスタイプ」の特徴について見ていきたいと思います。
ファンドの「バランス」とは?
前回と似たようなお話ですが、ファンド名を見ただけで何となく「バランス」というのはそれだけで分散投資ができそうな気がしませんか?
「バランス」は、タイプとしては大まかに以下の3つが挙げられます。
- 株式・債券・リートに投資する資産分散タイプ
- 国内・先進国・新興国に投資する地域分散タイプ
- 上2つの両方に投資する資産・地域分散タイプ
一本のバランスタイプのファンドを購入すれば、それだけで分散投資ができるので、投資を始めたばかりのかたに「おすすめファンド」として紹介されたりするのですが、やはりこのような「バランス」と名の付くものであっても、株式に偏ったり、日本や米国だけに偏ったりと様々あります。
上の画面は、「楽天証券」の「投信スーパーサーチ」で「バランス」というキーワードで検索してみたところです。
ファンド名に「バランス」と入っている本数は139本もありますね。
しかも、「バランス」という響きから安定的なファンド、つまりインデックス型ファンドを想像してしまいますが、139本の内なんとアクティブ型ファンドが111本もあるんです。
アクティブ型ファンドのバランスタイプは、株式やリートの比重を重くして、より多くの利益獲得を目指すものになります。
「投資対象や投資先のバランスを取る」と言っても、手数料が高くハイリスクでありながらハイリターンを目指すアクティブ型ファンドにも当然バランスタイプは存在するわけですね。
バランスを取るための内部構造
さて、各資産・各対象国にバランスよく投資をする「バランスタイプのファンド」が分散投資に不慣れな「投資を始めたばかりの人」に向いていると書きましたが、実は「アクティブ型ファンド」のバランスタイプには、各分野の投資信託に投資をする「ファンド・オブ・ファンズ方式」という運用形態を採用している商品も多くあります。
ファンド・オブ・ファンズとは
投資家が購入した投資信託がさらに各分野の投資信託を購入するので、投資家の視点でいくと手数料が二重三重に発生する。
つまり、信託報酬を含む管理費用の支払い額が割高になる。
アクティブ型ファンドに「ブラックロック・グローバル・フレキシブル・バランス・ファンド」というバランスタイプがあるのですが、このファンドは、日本を含む海外の株式や債券に配分を決めて投資を行います。
その目論見書に、運用形態が「ファンド・オブ・ファンズ」であると明記されています。
株式や債券に投資する「投資信託証券」へ投資を行うと書かれていますね。
そのため、管理費用は「1.683%」と高めとなっています。
「ファンド・オブ・ファンズ」で運用されるファンドは、投資家が投資したファンドとその先にある投資先のファンドが同じグループ会社のファンド同士という場合もあり、必ずしも運用効率や分散効果だけを考えて構成されているとは限りません。
手数料が安い「インデックス型」のバランスタイプは、投資を始めたばかりの人にも向いていると思いますが、「アクティブ型ファンド」で運用形態に「ファンド・オブ・ファンズ」を採用しているファンドは、必ずしも扱いやすいとは言えない可能性も多々あるので、目論見書でよく確認の上、購入を判断した方が良いと思います。
リバランスと運用成績
バランスタイプのファンドは、運用成績によっては「リバランス」と言って、投資している資産の構成比率を途中で変更する場合があります。
先ほどの「ブラックロック・グローバル・フレキシブル・バランス・ファンド」は、「資産配分変更型」と書かれています。
これは、『運用途中で投資対象の比率を変更する可能性があるよ』と言っているわけですね。
しかし、「資産配分変更型」と言っても、どの資産・どの地域の効率が悪くてリバランスをしたのかが投資家には分かりません。
逆を言えば運用成績が良くて純資産額が上がっている場合であっても、どの資産・どの地域の成績の良さが原因なのかは把握できないのです。
同じ比率で地道に投資していく「資産配分固定型」がいいのか、フレキシブルに投資比率を変更する「資産配分変更型」がいいのかは、ファンドの成績やその時の経済状況などにもよるので、一概にどちらが正解とは言えません。
バランスタイプのファンドを持つよりは、投資対象資産や投資対象地域を特定したファンドを別々に持って、自分でリスクを分散させるようにファンドのポートフォリオを組むのが、投資家として目指したい地点と言えるかもしれませんね。
まとめバランスタイプも良し悪し
苦手な分散投資を1本でまとめてくれるバランスタイプは、使い勝手がいい時もありますが、購入するファンドがすべてバランスタイプになるような買い方は避けたいところです。
どうしても、まだ投資に慣れないかたは、全体の1.5割から2割くらいを目安にバランスタイプのファンドを組み込むようにしてみるといいかもしれません。
「アクティブ型ファンド」も数多くのバランスタイプが揃っていますが、ハイリスクであり手数料率が高いのは、他の「アクティブ型ファンド」と同様です。
購入しようとしている「バランス」と名の付くファンドが、インデックス型なのかアクティブ型なのかは、目論見書などでもしっかりと確認しておきたいですね。