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誰も教えてくれない投資信託の落とし穴―その7(分配金必要?)―

2024年7月7日

前回、債券に投資するファンドの安全性について見てきました。

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今回は、ファンドを購入する際についつい気になってしまう「分配金の有無」に関する勘違いについて見ていきたいと思います。

勘違い1:分配金が多いファンドは好成績?

ファンドには、保有している間「年1回」、「毎月」など分配金を支払うものがあります。

上の画面は、「米国ハイ・イールド債オープン(通貨選択型)米ドルコース(毎月決算型)」というファンドの情報を確認しているところです。

「毎月決算型」とあるように、このファンドは毎月決算し、決算ごとに分配金を支払うタイプとなります。

定期的に利息のように支払われるため、「分配金の有無」をファンド選択の指標にしてしまっている方も多いのが現状です。

本来、分配金は運用の成果で上げた収益から支払われるものなので、運用成績が悪い時には支払われるはずがないのですが、運用成績に関わらず安定的に分配金を支払っているファンドは、成績も同じく安定していると勘違いされている方が多いのです。

では、なぜ運用成績が悪化しているファンドでも、毎月同じ金額の分配金を支払い続けられるのでしょうか?

それには、大きく3つの理由があるのです。

分配準備積立金

分配金の支払い上限は、そのファンドの運用で得ている「債券による利子収入」や「株式やリートからの配当収入」までとなっています。

そのため、運用成績が思わしくなく、保有銘柄の売却益や利子・配当収入による収益が見込めない時には、別に積み立ててある「分配準備積立金」を取り崩して分配金の支払いを継続しています。

では、この「分配準備積立金」とは何なのでしょうか?

これは、いわゆる運用成績が良かった時に余ったお金になります。

ファンドの信託財産の中に、これまでの運用で分配後に残ったお金を積み立てているわけですね。

この「分配準備積立金」は、ファンドの運用成績が悪くなっても、分配金支払いのためだけに使えるようになっています

例えば、今期1年間の「利子・配当収入」が0円だったとしても、「分配準備積立金」に500億残っていれば、今期は0円になるはずの上限が関係なくなり、「分配準備積立金」の500億の中から分配金を支払えるのです。

利子・配当収入までの上限

先ほど、分配金の支払い上限が『ファンドの運用で得ている「債券による利子収入」や「株式やリートからの配当収入」まで』と言いました。

逆に、これらの収益が予想以上に多くて、投資対象の売却損や評価損が計上された場合を考えてみましょう。

例えば、「利子・配当収入」が100億あって、投資対象の評価損が-50億だったとします。

この場合、相殺して50億の総収入となるわけですが、分配金支払いの上限は「利子・配当収入」の100億となります。

つまり、毎回の分配金全体で70億を支払わなければならないのであれば、『総収入の50億』と『残りの20億は純資産、もしくは「分配準備積立金」』から支払われます。

20億分は”元本の取り崩し”となるので、本来ならこの成績の時には、支払う分配金の額自体を下げなければいけないのです。

ファンド・オブ・ファンズ

「投資家→A投資信託→B投資信託→投資先」のように、ある投資信託が別の投資信託に投資する形態である「ファンド・オブ・ファンズ」の場合、分配金の上限である『「債券による利子収入」や「株式やリートからの配当収入」まで』という制約は、B投資信託の方では適用されていない場合があります。

このパターンは、Bの管轄が外国籍などの場合に見られます。

つまり、AはBからの分配金を受け取るわけですが、このBの分配金には上限がない(あいまい)ので、Bの運用の成績に関わらずAはBからの分配金による配当収入が増える可能性もあるわけです。

「分配金が多い=ファンドが好成績」というのは、まったく当てはまらない理論になるわけですね。

勘違い2:売買益の分配金への扱い

「利子・配当収入」までが分配金の支払い限度でしたが、ファンドのもう一つの収入源である「投資対象の売却益」は分配金にどのような影響を与えるのでしょうか。

例として、年1回分配金型の投資信託A(Aファンド)の運用を見てみましょう。

このファンドは、運用開始以降3年目の売買取引で初のマイナスを計上し、その次の4期目の現在、投資対象である「日本を含む先進国株式」が軒並み評価損を計上し、通算でも運用成績が10億のマイナスとなってしまいました。

毎年1回の分配金を支払うこのAファンドの4期目は、「利子・配当収入」が3億あったため、この収入と「分配準備積立金」を使って配当を支払いました。

5期目は、なんとか売買取引でプラスの運用成績に運んだものの、8億で留まりました。

さて、5期目の年1回の分配金はどこから支払われるのでしょうか?

実は、売買取引に通算で損失がある場合、例えその次の期に売買益が計上されても、この利益はまず前期からの繰越損失の補填をしなければなりません

つまり、5期目の売買益8億円は、分配金支払いのためには一切使えないのです。

この8億円は、4期目で繰越した10億の損失をまず埋めるために使わなければならないわけですね。

したがって、5期目の分配金も4期目と同様「利子・配当収入」「分配準備積立金」などから支払われるわけです。

運用報告書で確認すると

上の画面は、「日興中小型グロース・ファンド」という年1回の分配金を不定期に支払っているファンドの「運用報告書(全体版)」になります。

「分配金の計算過程」欄に、「b.有価証券売買等損益(経費控除後)」と言う項目があり、数値が記入されています。

この数値が記載されている場合は、「投資対象の株式や債券などの売買益が計上されていて繰越損失がなさそうである」と判断できます。

また、「a.配当等収益(経費控除後)」に記載されている金額と「g.分配金」の金額を比較してみると、今期の「利子・配当収入」から分配金を十分に出す余裕があるのが分かりますね。

なお、「運用報告書(全体版)」は運用会社のホームページ内で、目的のファンドのページから探してみ下さい。

販売会社(証券会社など)で確認できる「運用報告書」とは別の資料となります。

もし、「b.有価証券売買等損益(経費控除後)」に以下のような「-円」という記入がされていれば、そのファンドは、「今期の売買取引に損失が発生した」「今期の売買で収益となったが繰越欠損金の補填で今期の売買益を全て使い果たした後(つまりまだ通期で欠損金がある状態)」かになります。

勘違い3:特別分配って分配金?

分配金には、「普通分配」「特別分配」の2種類があります。

普通分配とは

自分が購入したファンドの基準価額が15,000円、分配前の基準価額が17,000円、分配金が500円で分配金支払い後の基準価額が16,500円になった場合、分配金はすべて元本以上の利益から支払われている。
購入者の利益となるため、分配金は課税対象となる。

特別分配とは

自分が購入したファンドの基準価額が15,000円、分配前の基準価額が13,500円、分配金が500円で分配金支払い後の基準価額が13,000円になった場合、分配金はすべて元本を取り崩して支払われている。
この特別分配は、「元本払戻金」と言われ非課税扱いとなる。

「特別」という言葉から何か特別にもらえる余剰金のように見えますが、実質は「普通分配」の方が正常な分配金となります。

分配金を毎月支払うファンドの場合、その分配金の種類が「元本払戻金」であれば保有の見直しも行った方がいいでしょう。

元本の取り崩しは、ひいては基準価額の下落を意味します。

勘違い4:分配利回りの良い見え方

分配型のファンドを購入した後に、自分が保有しているファンドがどれだけ効率よく分配金を獲得できているかを計る「分配利回りの計算」というものがあります。

上の画面は、証券会社が提供している9月時点での上場投資信託(ETF)のあるファンド情報ですが、分配利回りに関しては概ね上のような記載があります。

直近12ヶ月分の分配金が最新のファンドの価格(基準価額)に対してどれくらいの割合であるか、という計算方法です。

しかし、これは基準価額が上昇している時はいいのですが、下落している時は分配金を1年間(12回)払い出した後に、基準価額の購入時からの下落分が反映されていない計算方法となるのです。

そこで、考慮したいのが、「ファンド購入時から1年間分配金を受け取るまでの基準価額の差」です。

上の画面は、あるファンドの1年間の分配金支払い状況となります。

ファンドの購入日が「2021年10月4日(基準価額:8,870円)」だったとして、先ほどの証券会社が提示しているように計算すると、以下のようになります。

  • 直近1年間の分配金=20円×12=240円
  • 最新のファンドの基準価額=8,537円
  • 分配利回り=240÷8,537×100=2.8%

分配利回りが2.8%となりましたが、では1年後も同じ20円の分配金を受け取り続ければおなじ利回りになるか・・・というとそうはならないですよね。

そう、1年後の基準価額がいくらになっているかが計算されていないからです。

つまり、購入時からの基準価額が下落した場合だけは、下落分を考えて計算しなければなりません。

計算し直すと以下のようになります。

  • 直近1年間の分配金=20円×12=240円
  • 現在の基準価額が購入時のファンドと比べていくら下がったか=8,537円-8,870円=-233円
  • ファンド購入時からの分配利回り=-233÷8,870=-2.6%

分配金の支払いだけが基準価額の下落要因ではありませんが、ここでは単純に下落した分をすべて含めて計算しています。

「分配金の支払い」は基準価額の下落要因となりますから、投資家が分配金を受け取った際の利回り計算には、上のように基準価額をきちんと反映させなければなりません。

基準価額が下落し続けているファンドは分配利回りも当然マイナスになるので、毎月分配金が支払われるのが決して優秀なファンドではない、と言うのがよく分かるデータとなりますね。

勘違い5:分配金が過払いになっている?

最後に、分配金が過払いになっていないかどうかをチェックしてみましょう。

月次レポートで実質利回りをチェック

まずは、分配金を毎月払い出している「債券型ファンド」の月次レポートをチェックしてみます。

最新の「最終利回り」「6.6%」と表示されています。

もし、株式に投資するファンドの場合「配当利回り」などと表示されています。

「売買益(評価益)」と「利子・配当収入」の収益にかかっているファンドの信託報酬が「1.65%」(信託報酬は別ページに記載)なので、概算として「利子・配当収入」だけで半分の「0.825%」が掛かっているとします。

つまり、「6.6%-0.825%」なので、このファンドのコストを引いた「実質利回り」「5.775%」となります。

ファンドのページで分配利回りをチェック

一方、このファンドは基準価額が上昇しているので、分配利回りは、「直近12ヶ月の分配金を直近の基準価額」で除して求めます。

計算すると、「(45円×12ヶ月)÷7,054×100」となり、「7.65%」となります。

比較してみると・・・

直近1ヶ月での「実質利回り」は「5.775%」だったのに対し、分配利回りが「7.65%」とオーバーしていますね。

つまり、利子収入で得ているよりも多くの分配金を払い出しているので、売買益で補填できていなければこのファンドは分配金の過払いが発生していると読み取れるわけです。

まとめ分配はなくてもいいかも

さて、ここまで並べてみると、ファンドの成績と分配金の支払いにはまったく関連性がないというのがお分かりいただけたかと思います。

少なくとも「分配金の有無」をファンド選択の最優先項目にはしない方がいいでしょうね。

もし、「分配金型」のファンドを購入される場合は、ファンドの運用成績などを十分確認して、全体での保有割合を決めてからにした方が無難だと思います。

運用方法としては、むしろ分配金を配布せずにそのままファンド内で再投資してもらった方が、複利効果もあり運用成績が向上する可能性があるかもしれません。

そして、この分配金再投資については、実は個人でも対応できます。

証券会社でファンドを購入するタイミングで、分配金を「再投資する」か「受け取る」かをあらかじめ選択できるようになっています。

分配金を受け取ると、その時点で課税されます(NISA口座の枠があれば非課税)ので、投資資金を効率よく増やすのであれば、やはり発生した利益は再投資したほうが投資効率はよくなります。

分配金の払い出しは、個人投資家からも人気があるので、今でも多くの分配金型ファンドが販売されています。

しかし、成績の悪いファンドにとっては悪化に追い打ちをかけるだけですので、個人的には運用途中での無配・減配などの対応を運用会社でしっかりやって頂けたら、と思っています。

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