そろそろ2024年も終わりが見えてきました。
今年から日本の投資業界で新たに始まったのは「新NISA口座」でしたが、8月の株価大暴落、そして10月の衆議院選挙に11月のアメリカ大統領選挙と中々市場の動向が激しい1年となり、「新NISA口座初年度に損失を計上した」と言うかたも多かったかもしれません。
投資で得た利益の20%を非課税で運用できる「新NISA口座」は、旧NISA口座と違って「生涯投資枠」の1,800万円までの金額で購入された株式銘柄や投信で発生する利益は永久に非課税となります。
旧NISA口座にあった5年間という非課税期限はなくなったので運用しやすくなった分、「非課税期間が長くなったから」という理由だけで市場の調査や情報などを吟味せずに、当てずっぽうや人気があるからなどの理由で闇雲に投資商品を購入したという話も筆者の周りではちらほら聞きました。
税金の優遇政策を受けられるからと言って、投資で利益を生み出せるわけではありませんので注意したいところですね。
今回は、旧NISA口座と新NISA口座を併用しているかたが、旧NISA口座で運用中の銘柄などを今後どのように処理していったらよいかを解説してみたいと思います。
2020年に購入した銘柄について
2020年に「旧NISA口座」で運用を開始した株式や投信は、2024年で5年間の非課税期限を迎えます。
旧NISA口座で運用していた銘柄をどのように処理するかを考えなければなりません。
現在は「新NISA口座」があるとは言え、この新旧2つのNISA口座は連動するものではないので、自身で今後の運用方針を決めなければならないのです。
そこで、実際に運用方針を決める際に注意しておきたい点をまとめてみたいと思います。
旧NISA口座の保有銘柄に利益が発生している
まず最初の注意点として、旧NISA口座の銘柄は「新NISA口座」に移管できません。
そして、2020年に運用を開始した旧NISA口座の銘柄は、今年の2024年末に課税口座へと移管されてしまいます。
そのため、旧NISA口座の銘柄で利益が発生しているのであれば、一旦売却して利益を確定してしまうのも一つの手です。
引き続き、売却した銘柄と同じ銘柄を運用したい場合は、「新NISA口座」で購入し直してください。
「新NISA口座」で新たに運用を開始すれば、非課税期限はなくなるので自由に余裕を持った運用ができるでしょう。
旧NISA口座の保有銘柄に含み損が発生している
一方、旧NISA口座の保有銘柄に含み損が発生しているとします。
この場合でも「新NISA口座に移管できない」、「2020年に運用を開始した旧NISA口座の銘柄は2024年末に課税口座へと移管される」点は同じです。
しかし、2024年末に課税口座へと移管された時の株価が取得価格となってしまうのです。
例を挙げてみましょう。
しかし、2024年末時点で株価は60円になっていました。
旧NISA口座から課税口座へ移管されて、このAという株の取得価格は1株60円となりました。
2025年末でこのAの株価は90円となったので売却しました。
そうすると、元々の取得価格が100円×100株=10,000円だったAの株は、2025年に取得価格が6,000円となり、9,000円で売却したのに3,000円の利益が発生したと見なされます。
しかし、本来のA株の取得価格は10,000円だったわけですから、9,000円で売却したのであれば「1,000円の損失」として計上したいのですが、そうは問屋が卸さないのです。
そのため、2024年末でA株を損切りするか、株価が100円を超え、150円、200円と上がるのを待ちながら長期保有するかを選択しなければなりません。
仮にAの株価が200円となると利益は20,000円(200円×100株)-6,000円(60円×100株)=14,000円となり、この利益に対して税金が発生します。
本当の利益は、20,000円-10,000円(本来の取得価格)=10,000円ですから、4,000円分余計に税金を払う必要があるわけですね。
損切りとの匙加減で課税口座で運用していくかどうかを決めなければならないのです。
(まとめ)旧NISA口座は早めに切り上げた方がいい
旧NISA口座で運用している銘柄は、上記のように含み損が発生している場合に、取得価格が変更される理由から実際は損失なのに利益と計上され税金が発生してしまう場合があります。
そのため、早めに損切りも検討した方がいいでしょう。
損切り後、同じ銘柄を引き続き運用したいのであれば、株価が安くなったところで「新NISA口座」で新たに買い直す形となります。
もちろん「新NISA口座」の枠内であれば運用中はずっと非課税になります。
2つのNISA口座を併用していると分かりづらい点も多いので、保有銘柄の今後の運用方針を決める上でも、今回のお話はもう一度確認しておきたいところになりますね。