先日、今後何年間かで旧NISA口座と新NISA口座の併用が続きそうな人のために、これらの口座を利用する上での注意点を書いてみました。
「旧NISA口座」で保有銘柄がある場合にチェックしておきたい注意点を解説
そろそろ2024年も終わりが見えてきました。 今年から日本の投資業界で新たに始まったのは「新NISA口座」でしたが、8月の株価大暴落、そして10月の衆議院選挙に11月のアメリカ大統領選挙と中々市場の動 ...
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前回はどちらかというと旧NISA口座での注意点でしたが、今回は新NISA口座の成長投資枠で運用する上での注意点となります。
NISAの呼び方
証券会社や銀行などの金融機関では、2024年から始まった新NISAを「NISA」、それ以前の古いNISAを「旧NISA」として使い分けていますが、この記事では混乱を避けるため、新しいNISAを「新NISA」、古いNISAを「旧NISA」として表記します。
注意点までの流れを簡単に書いておきたいと思います。
- 新NISA口座の非課税投資枠のおさらい
- 生涯投資枠の上限のおさらい
- 生涯投資枠内の成長投資枠の上限のおさらい
- この3点をおさらいした上で分配金再投資の注意
それでは順番に見ていきましょう。
新NISA口座の非課税投資枠を確認
まずは新NISA口座の非課税投資枠を確認しておきましょう。
各年の年間投資枠の上限金額は「成長投資枠」が240万円、「つみたて投資枠」が120万円となり、合計で360万円となります。
つまり、360万円分の株式や投資信託の購入金額から発生する値上がり益や配当金、分配金はすべて非課税になります。
そして、新NISA口座を持っている人は全員生涯投資枠を「1800万円」持っています。
つまり、毎年各年の上限額である360万円分を購入していくと、最短5年で生涯投資枠を全部使いきるという意味になります。
では、1800万円の生涯投資枠分の株式などをすべて購入したとしましょう。
その後、新たに株式などを購入した場合はどのように処理されるのでしょうか。
以下に、箇条書きで挙げてみました。
- 本来の一般口座で保管される
- 売却益や配当益には課税される
- 他の赤字と損益通算ができる
例えば、証券会社に口座を作成すると、一般口座が用意されます。
その上でNISA口座の申請をするわけですが、1800万円の購入金額を超えた分は、本来の一般口座での運用となるわけですね。
”生涯”なのに1800万円使い切ったら・・
新NISA口座の「生涯投資枠」は、誰でも上限金額が「1800万円」になる、と先に書きました。
「生涯投資枠」なのに、最短5年で使い切ってしまったら後は一切新NISA口座を使えなくなってしまうのでしょうか。
実は、「生涯投資枠」はある条件で復活できるのです。
それは、購入した株式などを売却した時です。
例えば2024年(新NISA初年)に、新NISA口座の「成長投資枠で100万円分」、「つみたて投資枠で50万円分」の株式を購入したとしましょう。
合計150万円分を購入したので、「生涯投資枠」の1800万円から150万円が引かれて、この時点での「生涯投資枠」は1650万円となります。
その内、この2024年中に「成長投資枠の購入金額10万円分を売却」したとしましょう。
そうすると、この10万円分は翌年に「生涯投資枠」に復活します。
年間の上限投資額(成長投資枠240万円,つみたて投資枠120万円)は復活しません。
例えば、その年の1月にいっぺんに360万円分の株式などを購入してしまったら、今年はもう非課税投資枠での株式などの購入はできません。
そのため、1800万円分の株式などをすべて売却してしまえば、翌年から新たに1800万円分の「生涯投資枠」が復活します。
そして、この売却で収益が発生していれば、この収益に対する課税はされないわけですね。
成長投資枠だけは上限がある
生涯投資枠は1800万円ありますが、その内成長投資枠は1200万円までという上限があります。
「成長投資枠」に該当する銘柄を1200万円まで購入してしまうと、合計で1800万円までまだ余裕があっても、残りはすべて「つみたて投資枠」で購入できる銘柄のみとなるのです。
つまり、1200万円分の「成長投資枠」を使い切っていると、次に「成長投資枠」に該当する銘柄を購入してしまうと、1800万円まで余裕があっても、その購入分は一般口座で課税されるというわけですね。
一方、「つみたて投資枠」に上限はないので、1800万円すべてを「つみたて投資枠」で購入できる銘柄にしても問題ありません。
自分が今「成長投資枠」と「つみたて投資枠」のそれぞれでいくら消費しているのかは各金融機関で確認できると思いますので、枠をぎりぎりまで使っているかたは注意しましょう。
と、ここまでが今日のお話の前提となります。
では、1800万円の「生涯投資枠」を使い切った時点で気にしなければならない点を確認してみましょう。
自動的な再投資に注意
投資信託には分配金を支払うものがあります。
分配金とは投資信託の運用で発生した収益の一部を投資家に分配するお金です。
この分配金は、投資信託を購入する際に「受け取る」か「再投資する」かを選択できます。
受け取っている場合はいいのですが、「再投資」している場合には注意が必要となります。
というのも、この「再投資」分は非課税投資枠を使ってしまうからです。
「投資信託」を購入する際に、このファンドは分配金を支払っている実績があるのかないのかで判断し、購入しているかたもいるでしょう。
ファンドの目論見書などを読むと分配金の支払いに関する情報は書いてあります。
例えば、人気の高い「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の分配金情報は以下のようになります。
分配金について
優先し、原則として分配を抑制する方針とします。)
販売会社との契約によっては、収益分配金の再投資が可能です。
結果、このファンドは、ここ何年も分配金を支払っている実績はありません(つまり毎年分配金は0円)。
この場合は、特に気にしなくてもいいのですが、これが例えば100円の分配金が支払われているなど、分配金の実績があり「分配金再投資」を選択している場合に、この100円は非課税投資枠を使って購入した投資金額と見なされます。
そもそも、非課税投資枠をぎりぎりまで使っているかた限定の注意事項とはなるのですが、そのようなかたで毎月分配型のファンドなど分配金を再投資している場合は気をつけてください。
(まとめ)再投資は投資信託の分配金だけ
今回は投資信託の分配金の再投資に関するお話でしたが、日本の証券会社では、日本株の配当金再投資を自動で行っているサービスは確かなかったはずなので、この「再投資」を注意するのは投資信託の分配金だけと見ていいでしょう。
非課税投資枠をぎりぎりまで使っているかただけの注意点ではありますが、これから新NISA口座で投資する購入金額がどんどんと増えていく場合は、覚えておいた方がいい内容となります。