いよいよ大統領選挙が近づいてきましたね。
アメリカの分断が引き起こされる可能性が高まっている今回の選挙ですが、自分が当選しなければ「血が流れる(内戦が起こる)」と言っているトランプが現時点では優位に立っていると筆者は考えています。
そこで、今回は共和党のトランプ、民主党のハリスの両陣営が掲げる主要政策を振り返りながら、トランプ当選で恩恵を受けそうなセクター、そして両陣営が当選した場合のそれぞれのシナリオについて見ていきたいと思います。
トランプの主要政策
トランプは、一貫して米国人の経済的利益を追求する方針を掲げています。
いわゆる「アメリカファースト」の政策で、これは前回当選した時にも掲げていましたし、実際に公約はほぼ実行され景気は上向きました。
しかも、自身は大統領職の給与を寄付という形で受け取らなかったにもかかわらず、このあたりの報道は一切されませんでした。
さて、今回も以下の点を当選後の政策に掲げています。
- 減税、規制緩和、輸入品への高関税
- 国境の警備強化、不法移民の強制送還、軍事力強化
- 国外の紛争への関与を最小限に縮小
- 石油・天然ガスの国内生産を再開
簡単に言えば、他国製品を排除し、移民を廃止し、諸外国の戦争には参加せず、脱炭素・グリーン政策などくそくらえ、という政策です。
共和党は、企業に対するアプローチで国内の経済政策を上向きにしたい考えで、法人税を20%(国内製造業は15%)、恒久的な個人減税と社会保障給付金への課税廃止で後は国民1人1人に内需を拡大してもらう考えとなります。
米国内での規制を新たに作るもそれ以上の規制緩和を実施する一方で、諸外国への関税率、とりわけ中国への対中税率を引き上げるでしょう。
わたしたち日本にとっては、アメリカの輸入関税引き上げで企業の負担が増えるのに加え、トランプ当選で実施される「インフレ抑制法(IRA)の修正」は大きな影響となりそうです。
トランプ当選で6つのセクターには恩恵がある?
これらの主要政策から投資面では、以下のセクターに恩恵がありそうですね。
- 石油、天然ガス(掘削、生産、精製が進む)
- 鉱業(金、銀、銅、リチウムなど)
- 軍需産業(優れた研究開発プログラムを持つ政府請負の企業。従来の兵器を増やすだけでなく新しいテクノロジーを取り入れることが不可欠となる)
- 自動車製造業(電気自動車よりも内燃機関に重点を置いた自動車製造業)
- 暗号資産
- 銀行と金融(経済成長により、銀行は仲介者として利益を得る)
実際、石油や天然ガスなどの化石燃料はこれからも必須で需要が高まるとみて、大富豪投資家たちもこのセクターには投資を続けています。
日本でさかんに言われている脱炭素などの自然エネルギーは投資面ではあまりおすすめできません。
また、かつては暗号資産に否定的だったトランプも近年は暗号資産を保有していると明かしていますし、注目のセクターになります。
ハリスの主要政策
一方、ハリスの主要政策は以下のようになります。
- 企業やキャピタルゲインへの課税強化
- 価格統制、国境開放、警備予算削減
- 民間医療保険の廃止
- ウクライナへの援助継続による戦争の継続
- 環境対策と称したグリーン政策の拡大を支持
完全にトランプとは真逆ですね。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナへの援助減少が見込まれるトランプ当選を望んでいますし、ウクライナのゼレンスキー大統領はハリス当選を望んでいます。
ハリスもトランプと同様、アメリカ人の中流階級から低所得者層に対する経済政策を重視していますが、トランプが企業への減税や関税引き上げという形でアプローチするのとは違い、高所得者層(個人)からお金が全体に流れるような課税政策を挙げています。
また、児童手当や住宅補助などで個人の生活を補助するための財源を法人税率の引き上げ(21%から28%)で確保しようとしています。
トランプとハリスのどちらが当選しても景気押上効果は大きいとみていいでしょう。
それぞれの当選シナリオ
トランプの当選直後は過度な関税引き上げによって、輸入物価の上昇が家計や企業の財政を圧迫しGDPがマイナス成長へと推移しますが、徐々に上向きになっていく可能性が高いでしょう。
初年度のマイナスからその後のプラスへと転じて落ち着いてから振り幅を元に戻すような動きとなるため、変動が比較的大きめになると予測されます。
一方、ハリス当選では、GDPの推移は初めから落ち着いた動きを見せるかもしれません。
しかし上院・下院の選挙でねじれた場合に、ハリスの掲げる財政政策が上院の過半数を獲得できない可能性が高まり、すべてが思い通りに実施できないケースも考えられます。
両候補とも積極的な財政政策を掲げているので、政権が安定してからは比較的両陣営とも景気が上向くと予想されていますね。