「投資詐欺」に関するニュースというのは、結構頻繁に目にすると思いますが、
自分が当事者でなく第三者的な目で見た場合、「なぜ、こんな詐欺に引っかかったりしたんだろう・・?」と不思議に思った経験はありませんか?
「儲け話」、いわゆる「うまい話」には必ず裏があるのですが、儲け方や利益の上げ方が巧妙に造られた資料や言葉を並べられると、それが本当に素晴らしいものに見えたり、資産を投入してもいいと思えたり、感覚を狂わせられるのか、意外にもステータス(学歴・現在の職種・現在の年収)の高い人ほど「怪しい投資話」に騙されやすいものです。
しかし、もしこのような「うまい話」を提案してきた相手が「銀行」や「証券会社」などの”お金を運用するプロ”だったらどうでしょうか?
ただでさえ、「自分一人で資産運用など難しい・・」と思っている方にとっては、「運用のプロ」が提案してくれるならそれは”心強い!”と思ってしまうかもしれないですね。
さて、ここで少し考えてみましょう。
もし次のような環境にいるある人が、資産運用のアドバイスを受けたとします。
60歳男性
住まい:持ち家(ローン完済)
子供:独立
余裕資金:300万円
投資経験:なし
相談先:〇〇証券会社(窓口)
現在余裕資金が300万円ある60歳の男性が、興味のあった資産運用について実店舗の証券会社の窓口で、相談を受けました。
住宅ローンは完済済みで、子供も独立しており、完全に投資に回せる資金があったため、証券会社へ相談に行ったわけです。
投資経験のないこの男性に、証券会社は数ある投資商品から資金に見合ったものを厳選してくれました。
男性は、安心して薦められた投資商品を購入し、利益が出るのを待ちました。
・・・しかし・・・
投資した商品は、その後暴落。
男性が持っていた余裕資金の300万円は含み損も含め、マイナスとなってしまいました。
このようなお話は、決して少なくありません。
問題は、投資初心者であるこの男性に「何が足りなかったのか」です。
簡単に挙げると、実は以下の2点ぐらいしかないのです。
- 証券会社の窓口で言われるまま投資商品を購入
- 購入した投資商品の内容、特長、リターン及びリスクのチェック
それでは、この2点を確認してみましょう。
専門家であってもすべてを信用しない
「証券会社の窓口で相談したから大丈夫」
というのは、冒頭でお話したように、うまい話を持ってきた人を簡単に信用してしまったのと同じリスクをはらんでいます。
証券会社も根本にあるのはビジネスとしての売上です。
多くの投資家(投資家予備軍も含む)に投資商品を買ってもらって、そこに発生する各手数料で儲けを出しています。
もし、相談相手が「自分の儲けだけを考えている証券営業マン」であれば、投資家の利益は考えられていないわけです。
この例の場合、男性のその先の運用がマイナスになっても証券会社は痛くも痒くもないですしね。
むしろ、マイナスになったら
『では投資商品をこちらに変更してみましょう』
と新しい投資商品を薦めてくるかもしれません。
新たに購入してもらえば、さらに手数料が証券会社に落ちるのですから。
詐欺目的の人であっても、銀行や証券会社ような投資のプロが薦める商品であっても、すべて言われるままに鵜呑みにしてはダメなのです。
今回の男性に足りなかった1点目は、「対象商品や取引相手を”完全には信用しない”という心構え」です。
自分が何を購入しようとしているのかを確認する
薦められた投資商品の投資先やリターン、リスクがどのようになるのかを自分でも調べる必要があります。
- 「新しい投資先」
- 「革新的な投資商品」
- 「他の商品より利益率が高くなっている」
などと言われて、目新しさばかり目立ってよく分からない投資商品であれば、
これらがどのような投資先に投資して、リスクはどのようになっているのかなどを自分でも確認する必要があるでしょう。
もし、「よく分からないけれど儲かりそうだから」と言うだけであれば、やはり相手の言われるままとなっています。
投資信託は手軽な分だけ見極めが必要
例えば、たくさんの株式や債券、リートなどから分散投資ができるとして「投資信託」は、金融商品を販売する人たちが特に率先して勧めてくる商品となります。
これから投資を始めようとする方にとっても、自分で銘柄選定をする必要がなく、「購入してからの運用もプロに任せられる」とあって、今でも投資商品として人気が高いですよね。
メモ
その中身は、同じ運用会社のものなら、”前のと何が違うの?”というものもあったりします。
しかし、「投資信託」こそ、特に投資を始めて間もない方やリタイア後の余裕資金で購入される方々にとっては、特に注意深く商品を選定する必要があるのです。
ここでは簡単に、どのような注意点があるのかを書いてみましょう。
- 「先進国や新興国などの国別」、「株式や債券などの投資対象別」に本当に分散できているのか
- 名前だけでその投資信託の特長を分かったつもりになっていないか
- 投資先や比率など中身がほぼ同じで運用会社だけが違う投資信託をいくつも保有していないか
- リート型は元々の投資先が少ないので同じような商品があるが見極められているか
上の注意点は、サイドメニューの「投資信託の落とし穴シリーズ」でも連載しています。
今回例として登場した男性のように、投資に振り向けられる余裕資金が300万円くらいある方なら「投資信託」を6割、株式やETF、債券などの直接購入を4割にしてその中から先物やオプションなどでリスクヘッジを取ってもいいと思いますし、投資信託の割合を少し増やして特殊型(利益絶対追及型やブル・ベア型などのハイリスク・ハイリターン商品)も一部組み込んでもいいかもしれません。
いずれにせよ、投資資金の配分から各商品の分散具合などは自分でしっかりと把握しておかなければなりません。
今回の男性に足りなかった2点目は、「対象商品の内容・リターン・リスクについての理解不足」です。
まとめ情報は見られる
「投資信託」で言えば、「この商品がどこのどのような商品にどれくらい投資しているか」のような情報は、各銘柄ごとに公開されている「目論見書」や「月次レポート」などを参照すると分かるようになっています。
金融商品を購入するなら、常に、自分が何について投資しているのかは理解しておきたいものです。
かの有名なウォーレン・バフェットも「自分が分からないものには投資をしない」と言っていますね。
最近だと暗号資産関連の投資詐欺が多いようですが、目新しい投資先には、新しい投資詐欺もセットになります。
(以前のバフェットは暗号資産に対しては否定的でしたが、記事執筆時点での最新のバークシャーハサウェイのポートフォリオで一番成績が良かったのは、暗号資産関連の株でした)。
それでも、暗号資産への投資そのものが100%ダメというわけではありませんから、もし投資される場合には、内容やリスクなどを把握した上でご自分の全資産の数%ほどを振り向けるなど、納得のいく投資を行うようにしてください。