「5分後の世界」の概要
白綾裕人と白綾大和は同じ高校に通う双子の兄弟である。
小さい頃はよくできた兄の裕人であったが、中学高校に上がるにつれ弟の大和に勉強にスポーツにと水をあけられるようになり、二人の幼馴染である”みちる”と大和に対して、裕人はいつしかコンプレックスを感じるようになっていた。
そんなある時、裕人は学校からの帰り道で出会った占い師から
「未来に行けるが、どの未来にたどり着くかは分からない。元の時間に戻ってこられるのは1度だけ。」
というタイムリープが可能なブレスレットを渡される。
弟の大和とみちるが将来一緒になるだろう、と思っていた裕人にとってつまはじきとなる自分が将来どうなっているのか、三人の関係性はどうなっているのかがずっと気になっていた。
このブレスレットを使って、未来が確認できれば・・・
裕人は、呪文を唱えた。そして・・・
たどり着いた未来は、これまでの現実とそれほど変わらない同じ場所の日常のようだったが、周辺がなにやら騒がしかった。
人込みに向かってみると、大きな「仏像」が立っていた。
ガヤガヤと仏像の周りに集まってきた人たちは、仏像の様子を嘲笑していたが・・・。
仏像が突然暴れだした。
人間の頭はいとも簡単に割られ、どこからか表れた他の仏像たちに左右両方から腕を引っ張られた人間の体は、簡単に引き裂かれた。
パニックになって逃げだす人々の中に、裕人や未来の大和やみちるの姿もあった。
なぜ、仏像が動き、人間を殺さなければならないのか?
そもそも仏像はどこから現れたのか?
そうだ!ここは未来だ。
元いた時間に1度だけ戻れるのだから、ここは一旦引き返して、将来自分達人間が仏像に襲われてしまう前に対策を練ろう!
現在の日時を確認する裕人。
そこは・・・
元いた時間からたった5分後の世界だった。
マンガ評(少しネタバレ)
全体が「7巻」とちょっと短めのタイムリープサスペンスです。
大和と裕人が次郎に会うまで、暴れた仏像たちが人間を次々と引き裂いていく場面が多く、みちるや学校の仲間たちも最初の方で犠牲となってしまいました。
唯一の救いが、過去の時間から5分後の未来へとやってきた大和の存在であり、一度だけ「ブレスレットを使った時点」に戻れる大和さえ生き続ければ、最悪のタイミングで過去に戻ればもう一度やり直せるのは分かっています。
でも、戻ったところで仏像が暴れだす5分前にしか戻れないので、結局今いる時点で解決策を探していくしかありません。
街の中を歩き、みちるの家へとやって来た大和と裕人は、みちるの妹であるかけるを発見します。
そして、大和以外で未来を知る唯一の男、冬川次郎の存在。
次郎から与えられた「オド・ジーニアス」を使って、大和たちも低級の仏像たちを倒せるようにはなったのですが、A級、S級の仏像たちには歯がまったく立ちません。
大和と同じ未来を経験し過去に戻ってきた次郎曰く、すでに次郎が知っている未来は3つも変わっているそう。
その1つが、今この段階で過去に戻れる大和がいること。
つまり、次郎が未来で見てきた経験と、仏像に破壊される前の過去に1度だけ戻れるチャンスのある大和を絶対に生かしながら、仏像たちの弱点を探り、全滅させるための方法を見つけるしかないのです。
仏像のいない世界であれば、弟の裕人に劣等感を持ちながら生きていくかもしれなかった大和は、仏像との戦いを通じて成長していきます。
そして、解決策を模索する大和たちの前に怪しすぎる科学者「七々扇遊馬」も登場し・・。
生物や仏像の死骸を研究していた七々扇は、仏像は人間が作ったものではなく、仏像は始めから世界に存在していて、人間がその模倣となる仏像を作ったものだと説明します。
次第に、大和たちは、本来仏像は人間と共生し、地球上の生物と仲良く良好な関係にあったと分かってくるのです。
しかし、仏像が人間に向かってくるあの狂気の姿は、明らかに人間に対する憎しみが含まれています。
そして、大和がたどり着いた仏像たちの現在置かれている状況・・それは仏像たちの方が被害者であったという結論。
そして、人間が仏像を破滅しようとした理由。
狂気乱舞する仏像たちが暴れて人間の世界を襲っているだけだと思って読み進めると、
実はその狂気の理由が、『先に仏像破壊をする人間側にあった』、という事実が分かってきます。
実際にも、自然破壊などが叫ばれていますが、「5分後の世界」では、それが自然ではなく仏像に見立てられているのかもしれません。
そして、仏像との戦いで最後、大和たち人間が考えてしまうのは、これまでと同じ平穏な日常でした。
そのためにも、人間が仏像をなぜ支配したのかを探る必要があります。
そして、そのカギを握るのは、あのブレスレットを渡してきた占い師にあると気が付くのです。
それにしても、次から次へと湧いて出てくる仏像たちの姿は、人間とほぼ同じ大きさや人間よりも大きく、私たちが生きているこの世界では少し想像しづらい災難ですよね。
仏様のような柔らかな笑みを浮かべているように見えて、人間を追い回す姿は、ある意味グロテスクな感じもします。
それにしても、一つ不思議なのは、このタイムリープの仕様です。
大和は、5分後とは言え「未来の世界」にやってきたわけですが、この5分後の世界にいるはずの本来の大和はどこにも出てきません。
5分前からやってきた大和は大活躍するも、本来2人の大和がバッティングするんではないかな、と思ったんですけどね。
前半は、仲間と共に凶暴な敵に対峙していくヒーローものかな、と思いきや後半はヒーロー像だった人間側が実は凶悪で、人間の世界を破壊された元凶は人間そのものだった、という話であったわけです。
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5分後の世界の情報
連載 | 週刊少年サンデー |
作者 | 福田宏 |
巻数 | 7巻 |
現況 | 完結 |
3,493円から