最近読み直したマンガ、あるいは新しく読み始めたマンガを語る「おすすめマンガ」のコーナーです。
今回は、「夢で見たあの子のために(著/三部圭)」を語ってみたいと思います。
ご注意
2017年に連載を開始しているので、他のサイトやマンガ評などでもよく語られています。
当サイトでもネタバレになりそうな部分がおそらくたくさんあるので、まだ読んでいない方はご注意ください。
あらすじだけ知りたい方は「Wiki」の方を覗いてみてください。
(主人公)5歳で引き離された双子の運命
13年前に起きた千葉県の地方で発生した夫婦殺害から始まるサスペンスです。
中条千里はこの殺害された夫婦の子供で、双子の兄・一登はこの事件以降行方不明となります。
双子特有の感覚で、ケガしたところが二人とも痛くなったりするように、ある時まで一登の見ている情報が千里にもおぼろげに見える「視覚共有」がありました。
この事件の最中に、連れ去られた一登の視界を千里も共有していたため、千里は一登が死んだと思っていなかったのです。
殺害された両親からの関心が薄く、兄弟一緒の時間がすべてだった千里は、一登の行方が分からないままたった1人となってしまいました。
その後に入園した養護施設「もみじ園」でも、一登が連れ去られた時の視覚共有で掴んだ”犯人”の特徴を忘れてはいませんでした。
しかし、それから少し経ったある日、最後の視覚共有は千里が突然「体が浮き上がる感覚」、「景色のゆがみ」、「全身のしびれ」、「目の前が真っ暗になる」ような衝撃的なもので終わったのです。
小さい頃にあったあの視覚共有が今では全くなくなってしまい、「一登は死んだ」と思っていた高校生の千里は、一登を連れ去った殺害犯を追うべく、復讐を果たすために事件に関係する情報を集めていきます。
(主人公の同級生)同じような境遇の友-惠南-
もみじ園には、父親が殺人犯として逮捕され母親がその後自殺してしまったという両親を持つ「惠南」という同級生の女の子がいました。
「千里には、未来を想う力が足りていない」と感じていた惠南は、千里を監視しつつ犯人を捜すためのサポートをしてくれます。
千里は、母方の両親の営む青果店で一緒に暮らしていますが、千里の祖父は殺された父親のようになってほしくなかったので、千里の生き様を気にかけていました。
そこにうまく立ち回っていたのが惠南で、千里の祖父、そして千里とも万能なコミュニケーションを取っていたのです。
千里と一緒に行った千里の実家そばにある双子だけの秘密基地で、千里は久々の視覚共有を果たしました。
「一登の視覚=一登が生きている」
その時、惠南は2度目となる千里の笑顔を見たのです。
見どころ(ネタバレあり)
最初から結構ダークな状況で始まるのは、著者のもはや王道と言ってもいいかもしれません。
高校生ながら、幼い時の事件の記憶から双子の兄である一登の復讐のために生き続けている千里ですが、その胸の内にある「自分だけが生き残った」という兄への想いが切ないですね。
現在同居している母方の祖父やもみじ園に入った時から気にかけている駒津刑事、そして同級生の惠南や取り巻きの仲間たちなど、周囲には千里を想って気にかけてくれる人たちがたくさんいるのですが、どうしても一人で動いてしまう。
そんな千里を駒津刑事の部下である若園刑事もサポートするのですが、若園にも実は千里の事件の犯人と関係のある過去、そしてもみじ園出身だったという過去が判っていきます。
犯人の足取りを追うために、事件のあった実家から母親の行動を監視していた父親のメモを見つけた千里は、事件の犯人と思われる人物が意外な人物だと分かり、犯人の背景にもまた複雑な事情があったと知ります。
千里側(千里と取り巻きの仲間たちと惠南)と刑事側で同じ犯人を追いながら、同じ刑事である若園は違う目的で犯人を追い詰め、犯人側は一登と共にある目的で殺人を続けている、という非常に複雑な人間関係の様相を見せますよね。
追う側と追われる側が互いに少しずつ交錯しながらも、千里と一登だけは交わらない。
お互い両サイドに立つその存在を分かっていながら(ある時は居場所を視覚共有で教えながらも)中々近づけません。
緊迫の追いつ追われつは、まさに息もつけないサスペンス展開となっています。
そして、犯人側を追う途中で千里が気が付いた一登の大事なもの。
それがあるために、千里にも迂闊に近づけなかった一登の守らなければならないもの。
最後の瞬間、一登がそれを守るために華々しく散った後に、千里が引き継いだその形は、
一登が5歳の頃に受けた境遇と同じような形となりましたね。
衝撃・・ではなかったですが、一登の大事なものが出てきた時に、何となく最後はこうなったらいいな、という形で終わってくれました。
全11巻なので、割と展開も早く読みやすかったです。
最初のダークな入りからしばらく暗い展開が続きますが、最後は千里・万里で万感のラストシーンだったと思います。
「夢で見たあの子のために」1巻はこちらから
価格:638円 |
夢で見たあの子のために
連載 | ヤングエース |
作者 | 三部 圭 |
巻数 | 11巻 |
現況 | 完結 |
おすすめ度 |
全巻の中古はこちらから
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