あらすじ
アラタの勤めていた会社が倒産した。
社会から脱落した状態で仕事を探していた時に、ふと見つけた民間の軍事会社「PMC」の求人に応募してみた。
テストに合格し、派遣先であるタジキスタンへと2年間の予定で赴任する。
戦術ゲームのように戦隊を指揮する訓練の日々が続いていたが、実は訓練ではなくリアルな戦場での作戦指揮をしていたと判明する。
仮想の「敵」だと思っていたのが、無抵抗の村人だと分かってアラタは苦悩した。
その後、アラタは訓練後に新しい配属先として「キャンプ・モリソン」へと赴いた。
ある時、オマルの部隊を指揮したアラタは、「部隊全員が生きて帰れるための作戦」を的確に指示してくれたと、部隊全員からとても感謝される。
しかし、アラタは愕然とした。
オマルの部隊は、少年兵だけで構成された部隊だったのだ。
軍事作戦には、近隣の村との戦闘を回避するため村全体を抱き込む。
しかし、村から差し出された兵隊は、子供たちだけ。
戦力の大人たちは出せないため、村も苦渋の選択となるが、一方で部隊も子供たちを差し出されるとは思っていない・・・。
アラタは、憤るしかなかった。
その後の軍事作戦でアラタも現場に同行した際に、本部が襲撃された。
現場での軍事作戦でオマルや少年兵たちと共に、村と政府軍の懐柔を治めたアラタは、日本に帰国し民間軍事会社を起ち上げようと決意する。
1年後、成田空港に少年兵たちと降り立ったアラタは、早速空港のひと悶着騒ぎを解決する。
その時、出会った謎の女性が、「伊藤幸恵(いとうゆきえ)」。
この女性との出会いが、この先のアラタの活動に深く関わるようになるのだった。
感想(ネタバレあり)
ストーリーの序盤は、平たく言えば勤めていた会社の倒産によりニートに近くなっていた青年が、次の就職先として民間の軍事会社に就職したお話です。
ニートでゲームに明け暮れたゲームスキルが、「戦争屋」としての戦術リーダーとして頭角を現すのに一役買います。
最初は、中央アジアのウズベキスタンでの研修からスタートし、シミュレーションゲームで培った戦術により徐々に台頭を表しますが、実は研修だと思っていた戦術訓練が、研修ではなくすでに本番だったのです。
中央アジアの紛争地域で少年兵たちの指揮官としてオマルと共に、日本、タイ、そしてミャンマーへと活動の場所を移していきます。
タイでの子供たちを輸出する業者の特定やミャンマーでの対中国軍との戦いなど、最後まで少年兵たちに軍事作戦・戦術を指揮するアラタの前には、昔の仲間や、味方のはずだった国の兵士など裏切りも多くありました。
しかし、戦いの中にある恋や友情、そして悲しい別れなどいい意味で人間臭い場面も平行して訪れます。
ハキムの死を自分のせいと抱え込んだジブリールに慰めの言葉を掛けたオマルが、普段ジブリールとのやり取りが多いアラタに電話で相談しようとして”情けない・・”と相談せずにすぐ電話を切った場面は、これまであまり見せなかったオマルの不器用さを垣間見た感じでしたね。
最初は、20数人だった少年兵たちもミャンマーに入ってからは、一気に子供の数や村から逃げてきた住人などが増え大所帯になっていきます。
仲間での友情が芽生えた時に、アラタが思った「戦争での友情は危険・・いや悪いのは戦争の方」。
アラタは、子供兵士たちを指導・指揮する立場で、常にその命の重さを考えながら戦い続けていましたね。
そういえば、ホリーが後で再登場した時は、アラタが自由戦死社の訓練所で訓練していた時の通訳兼「ほにゃらら」だったシャウイーだとすぐに気が付きませんでした。
ホリーは、結果的にミャンマー軍とミャンマーに反旗を翻そうとする部族を取りまとめ、「ミャンマーにとっての本当の敵は誰なのか」を気付かせ、アラタ達を救ってくれました。
いわゆるアラタの女バージョンのように、どん底から這い上がり、最後は出自であるミャンマーの政治の世界へと移りそうなほどその活動を認められていったのです。
読み終わる前の最終的な結末の予測として、このどん底から華麗に立ち直る役は、アラタと同じ自由戦死社の同期であったソフィだと思っていました。
アラタやソフィと同期であるキシモトによって拉致され、部隊からは離れましたが、考えてみるとソフィもキシモトも、結局アラタとは逆に不運な道を辿ってしまいましたね。
アラタは、結婚もしていないし子供もいなかったのに、子供使いとして集めた少年・少女たちを守りながら戦い続ければ続けるほど、その指揮と人望で子供から大人まで家族のように人が集まる。
一方、結婚して子供もいたキシモトは、自由戦死社で自身を教育したトレバーの部下として活動したのが誤算で、日本で自分の子供が殺され、自分はアラタにやられ、生き延びた先で廃人のようになり、最後は自由戦死社の元上司であるランソンによって、自爆もできずに最期を迎える。
この2人の結末を比較すると、本当にキシモトが不運の塊のようです。
キシモトに拉致されて以降、部隊から離れ入院姿だったソフィも不運だったかもしれませんが、最後は「梶田」によって回復できそうなのがまだ救いでしたね。
小説版は続きがあるようですが、漫画版はミャンマーとの軍事境界線の紛争で中国軍を撤退させて完結となります。
全巻通じて戦いの場面が多く、良い場面も悲しい場面もありましたが、ほとんどの子供たちが生き残れたのは良かったですし、最後に見せたアラタとジブリールの様子が、戦争終結後の”新たな”未来を感じさせてくれる描かれ方となっています。
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マージナルオペレーション
連載 | 月刊アフタヌーン |
作者 | 芝村 裕吏(作画:キムラ ダイスケ) |
巻数 | 16巻 |
現況 | 完結 |
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