「自殺島」の概要
自殺を繰り返していたセイは、横たわった病院のベッドの上ですべてを終わらせてくれるように医師に頼んだ。
手渡された書類にサインをして、「これで人生を終えられる」と目を閉じた彼は、不意に”暑さ”を感じて目を覚ました。
炎天下の中目を覚ました場所、それは、どこかの島のような場所だった。
周りを見わたすと、見知らぬ人々が、自分と同じように目を覚ましたばかりだった。
戸惑う彼らの目の前に、日本国政府が掲げた看板が目に入った。
「あなた方は生きる権利と義務を放棄して本島にいます。」
炎天下で目を覚まし、飲み水を探しに歩き出す彼らと一緒に歩き始めたセイだったが、飲み水さえ手に入れるのが難しく、実は自分は好きなものを好きな時に飲んでいたのだったと気がつく。
島に流れ着いても、死を選ぶ者。
逆に、生へと執着し始める者。
セイは、島でも自殺を選ぶ者に対して、生きようとする自分、つまり死ねない自分にコンプレックスを感じ、これまでの生活から切り離された島に流されたからと言って、自分の本質は変わらないのだと痛感する。
しかし、島で生活していくにつれ、島に生きる生命の美しさに惹かれ、その対極にいる自分達人間の醜さを理解していくようになる。
島に試される彼ら、そしてセイ。
自ら弓を作り、狩猟を行うと決意したセイは、自分が変われるのか、生きていけるのかを島に試されているのだと理解する。
そう、ただ生きる為に生きる。
鹿を追い山に入ったセイは、とうとう自分の弓で初めて鹿を仕留めた。
命をくれた鹿に、鹿を育てた森に、森を育む島に感謝をしながら・・。
自分が生きる為に命を奪った鹿の肉を手に入れた。
鹿の肉をどのように運ぶか思案しながら山の中を彷徨っていたところ、島の先住人と出会う。
先住人は、いつそしてなぜここで暮らしているのか・・。
今だこの島に流された理由が分からないセイは、先住人から衝撃的な話を聞くことになった。
マンガ評(少しネタバレ)
「自殺」という重いテーマをタイトルに含めていながら、自殺とは対極の「生きる」術を「元・自殺未遂者」達が繰り広げていくサバイバルストーリーとなります。
生きていく意味を見出せなかった主人公のセイが、高校時代に少しかじった程度の弓矢の知識を発展させて、動物の狩猟そして時にはグループを守るためのハンターとして成長していきます。
島で暮らすグループのみんなも漁や野菜、ヤギの飼育、塩田、アルコール、水田と自分たちが食べていくために互いに支えあいます。
仕事や娯楽、そして何より法律のない生活は、元の生活では味わえなかった”生きるためにどうしたらよいのか”を実感させてくれるのです。
やはりこういった生活になっても、人の上に立ってみんなを引っ張っていくリーダータイプ、周りと同調しながらそつなく生きていくタイプなど、それぞれの個性が表れます。
セイが所属しているグループにも、各役割のようなものが出来上がるのですが、最初に読んだ時には生きていく知恵を提案していたのは、グループのリーダーだと思っていたんですが、実はあの方だったんですねぇ~。
最後の最後であの方が、”実は色々提案してみんなを助けたのは僕なんだよ”と自ら話す場面がありますが、それを読むまで完全に忘れていました。
もう一度読んでみると、”あ~、確かに(笑)。リーダーじゃなかったんだー”と分かるんです。
しかし、いくら自分が方向性を示したとは言え、それを実直に自分の物へと吸収するか、それとも提案しただけで終わるのか・・
ここには、努力する人・努力の足りない人の姿が浮き彫りとなります。
この方は、最終的に仲間割れによってセイのいるグループからは離れてしまい、後々発覚する別のグループへと移ってしまいます。
まぁ、あまり好かれるタイプの人間ではないのでしょうね(笑)
さて、セイはと言うと、いわゆるレベル1が最終回に向かってパワーアップしていくタイプの主人公です。
別のグループとの対立でも、セイのハンターとしての成長が常に見られ、愛する女性を守る強さも手に入れ、島で生きていくためのスキルを身につけ、いつの間にか1人でも十分生きていけるだけの人間へと成長してしまいました。
基本的に法律や秩序のない島での生活なのですが、グループができ、そこでリーダー的存在ができ、暴力を拒否し、誰かを愛し、自分のグループのためなら命を懸けて戦う。
島の息づかいと共に成長していく彼らが最後に見たモノ、そして自殺島とはいったい何だったのか・・・。
最後の場面で誰も「〇〇〇」と言わなかった彼ら、そしてセイは、まさに”イキル”ための技術を手に入れた証だったのかもしれません。
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自殺島の情報
連載 | ヤングアニマル |
作者 | 森恒二 |
巻数 | 17巻 |
現況 | 完結 |
おすすめ度 |
9,605円から