ホラー作家でYouTuberと言えば、「顔なし」のようなお面と黒いタイツの上下のいでたちが真っ先に思い浮かぶ「雨穴」さんではないでしょうか。
「雨穴さん」が真っ先に浮かんだかたには先に謝っておきます。
今回はむしろ「雨穴さんなんて知らない!」、「変な家って何?」という人たちに向けて書いていますのでご了承ください。
雨穴さんが出した3冊の本が、2024年上半期のベストセラートップ10に入った、という話をおよそ1年前に当サイトでも取り上げていました。
-
「変な絵」がベストセラー総合ランキング7位!Top10で雨穴本が3冊
YouTuberで作家の「雨穴(うけつ)」さんをご存じでしょうか? 作家として本を出版し、YouTubeの動画でもミステリードラマを自分で作って公開するなど、マルチなコンテンツクリエイターとして活躍さ ...
続きを見る
この3冊の本というのが、以下になります。
- 変な家
- 変な絵
- 変な家2
実はこの3冊の本はどれも素晴らしい構成力で、雨穴さんの描く全体像は始まりから終わりまでのフローが毎回美しいのです。
終始、先の読めない展開と最後にちょっと余韻を残す絶妙なバランスで、読み終わった後には一つ一つ話を嚙み締めた後の満足感から、思わず感嘆のため息が漏れてしまいます。
そして本のオープニングや最初の触りの部分を「YouTubeの動画」としてアップしていて、これらの本の宣伝ともなっているのです。
動画のクオリティもまた素晴らしく、続きの本を読ませたくなるように作られています。
例えば小説「変な家」であれば、序盤で不思議な間取り図を手にした雨穴さんと設計士の栗原さんとのやり取りが、以下の動画として公開されています。
「変な絵」は、第一章を以下の動画で公開していますね。
そして「変な家2」は、以下になります。
そして今回、「【不動産ミステリー】変な家」から書籍化された「変な家」の小説版が、なんと全編Web上で「無料公開」となったのです。
まず簡単に「変な家」が公開されてきた経緯を辿ってみます。
step
12020年10月
雨穴さんが執筆した記事を公開していたWebメディアの「オモコロ」で、「変な家」の記事が公開される。
step
22020年10月
同じタイミングで、YouTubeに「【不動産ミステリー】変な家」として動画が公開される。
step
32021年7月
動画の続きが小説「変な家」として公開される。この作品が雨穴さんの作家デビュー作となり、シリーズ累計発行部数250万部を超える。
step
42024年3月
小説を原作とした実写映画が公開され、興行収入50.7億円の大ヒットとなる。
そして今回の話題は、雨穴さんファンにとっては驚愕の出来事となりました。
小説として販売されていた「変な家」が、なんとWebメディア「オモコロ」にて全編掲載となったからです。
雨穴さんによれば、出版社の了解を得ているそうなので全編掲載はまったく問題なさそうです。
出版社も思い切りましたよね。
この「【完全版】変な家 」は、小説「変な家」をさらにリメイクした形で小説を読んだ人にも楽しんでもらえるように加筆や修正がされています。
さらにさらに、この完全版の変な家がYouTubeでもアップされました。
全編104分の大作で、軽く映画1本分となりますね。
しかも小説やオモコロの記事とは違い、動画は実際の物件を雨穴さんが内見している様子もあり、変な物件のリアリティが視聴者にも伝わるように作られています。
小説の無料公開、同じ内容の動画をアップ、と最近音沙汰のなかった雨穴さんがここに来てまた話題をさらっています。
元々雨穴さんがYouTubeにアップする動画コンテンツは、そのクオリティもあり前回の配信から結構時間が掛かるのです。
前回配信された長編ホラー「【雨穴ホラーミステリー】あの日、彼らは何をした」からは、実に1年くらいの期間が空いていますしね。
さて今回の雨穴さんの動きで、非常に重要な点が3つあるのです。
それは、料金と動画内容とダメ出しです。
順番に見ていきましょう。
小説も動画も無料
まず何と言っても、ホラー系作家で”YouTuber”でもある雨穴さんがYouTubeに公開している動画に「広告を付けていない」点が挙げられます。
今回オモコロで新たに公開された「【完全版】変な家」も全編に渡って広告が入りません。
重厚なストーリーにどっぷり入り込み、集中して見られるわけですから視聴者としては「実質の無料放送」に歓喜したくなります。
YouTuberと謳う人たちは、動画の合間に広告が入るようにして広告収入を目指しています。
何らかの記事を書いたって、その周辺にはGoogleアドセンスやアフィリエイト広告が入ったりするサイトが多いでしょう。
当サイトもです(笑)
元々オモコロの記事には合間に広告が入ったりしませんが、雨穴さんが公開した「【完全版】変な家」の記事は長いですからねぇ。
雨穴さんであれば、YouTubeの動画も小説記事も合間に広告が少し挟まったところで誰も文句を言わないと思います。
そういう意味では正にコンテンツだけで勝負している希代のクリエイターと言えるでしょう。
これまでアップされてきた短い動画にも意味が
これは正直鳥肌が立ちました。
小説「変な家」のオープニングにあたるYouTube動画の「【不動産ミステリー】変な家」が2020年10月に公開された約半年後に、「尼の人形」という3分20秒ほどの動画が公開されました。
雨穴さんが新たに公開した動画は既に毎回見るようになったので、この「尼の人形」も当然その当時に見ました。
しかし「尼の人形」が公開されて初めて見た時には、ただ雨穴さんがギターなどの楽器を持って自作の歌を歌っているだけだと思っていました。
ところが・・・
今回公開された「【完全版】変な家 (全新録)」のエンドロールに表示された主題歌として表示されていたのは、この「尼の人形」だったのです。
うん?!と思い、雨穴さんの動画一覧からもう一度「尼の人形」を開いて聞いてみました。
すると・・・この歌詞が正に今回の「完全版変な家」の動画を裏付けるような、もしくは歌詞の解釈によっては動画の内容の方が微妙に変わってくるような、「尼の人形」がそういう歌だったのだと気が付いたわけです。
恐ろしいのはここからなのです。
つまり雨穴さんは「変な家」を出版した2021年7月時点で、この小説のストーリーを意識した「尼の人形」という曲を2021年5月時点で公開していたのですから、いずれは「変な家」の完全版を動画として公開しようとこの2021年5月時点で既に考えていたのではないか、と推測できるわけです。
そして「変な家」を出版してから4年後の今回、「完全版変な家」の動画を公開し、さらにエンドロールの主題歌として4年前に公開していた「尼の人形」を据えて、視聴者をさらに驚かせたのです。
実写映画にダメ出しの意図?!
最後に実写映画化された「変な家」は、原作者である雨穴さん自身が酷評していたという噂があります。
公開直後に雨穴さんが自身のXに「ゴミ」と投稿したそうですが、筆者はこの投稿を見ていません。
Xでは「ゴミ」という文字だけだったそうですから、雨穴さんが実写映画を本当にゴミと評したのかは分かりません。
しかし雨穴さんが今回の「【完全版】変な家 (全新録)」を公開した経緯を思うと、実写映画など作ってもらわなくても自分で実写化した方がより良いものができる、というメッセージでもあったのではないかと思うのです。しかも(おそらく4年前から完全版の動画化を想定していた「尼の人形」という)主題歌付きで(笑)
比較されてしまった実写映画の方は少々惨めかもしれませんね。
(まとめ)ただただ・・・
筆者は「【完全版】変な家 (全新録)」が公開された数時間後に見たのですが、それでもその時点で既に60万人くらいの人に視聴されていました。
この記事執筆時点の公開から4日くらいで、早くも400万人くらいに視聴されています。
視聴者としてはもちろん嬉しいと言う感情とは別に、今回も雨穴さんの底力をまざまざと見せつけられ、ちょっと嫉妬に近い感情も湧きましたね。
「【完全版】変な家 (全新録)」のクオリティはもちろん、実写映画と違い全編フルで広告なし、おまけに動画の最後に驚きの展開まで用意して動画の内容そのものをもう一度考えさせられる・・。
動画を見終えて、「凄い」しか出てこなかった自分の文章力に、ただただクオリティの低さを感じてしまいましたね。



