TBSラジオの「問わず語りの神田伯山」と言う番組をご存じでしょうか?
毎週金曜日の夜9:30からやっている30分番組で、講談師の神田伯山氏がリスナーからのメールやはがきを読んで色々しゃべる番組なのですがこれが結構面白いのです。
「神田伯山」と言えば、今講談の世界で最も人気のある講談師と言ってもいいでしょう。
さらにYouTuberやラジオ番組のパーソナリティーなど多方面で活躍しているのですが、自身のYouTube番組「神田伯山ティービー」で昔やっていた「畔倉重四郎」の話を聞いた時の衝撃は相当なものでした。
何が衝撃だったかと言うと、噺だけであそこまで引き込まれるものなのかと思ったのです。
しかも、字幕付きで動画内には一切の広告が入らず、連続物の全19席すべてをYouTubeで見せてくれた、と言うその大盤振る舞いには衝撃を越えて少し嫉妬すら覚えたものです。
それまでは、座ったままで話すだけの落語や講談というものに正直あまり興味がありませんでした。
しかし、この「畔倉重四郎」を聞いた時は途中で止まらなくなり、一気に全部聞いてしまうほど本当に引き込まれたのです。
1席20分前後(初回はもう少し長め)で全19席あったので、その日は見事に半日以上を「畔倉重四郎」に費やしました。
今でも見られるようなので、ご覧になっていないかたは是非全19席を堪能してください。
そんな神田伯山氏がパーソナリティーを務める「問わず語りの神田伯山」で2024年11月15日放送分の「ほぼ女性からの人生が見えすぎるメール(寄席に行かずに恋をしろ)」の前半で語っていた「効率」の話が面白かったので振り返ってみたいと思います。
この放送以前に、「じろう」さんというリスナーから以下のようなお話があったそうです。
それに対して「バカバカしい!こんな時代になんでわざわざピン札を持っていかなければならないんだ!」と憤ったこの友だちの顛末をSNSに挙げたらバズって9割くらいの人から賛同が来たそうです。
これを読んだ神田伯山氏が、「俺は残り1割。ピン札の方が礼儀があって、もらう方も気持ちいいんじゃないの」という話をラジオでしたら、「じろう」さんから次のようにメールが来たそうです。
この「じろう」さんの返事に、神田伯山氏が「違うぞ、じろう。お前はバカヤロウだ(笑)効率ばかり目指して世の中おかしくなっているところがあるんだ。」と熱く説教ちっくに話したそうです。
これを神田伯山氏はエンタメ的にやり取りしていたのに・・・結果「じろう」さんは傷ついた、と(笑)
このバカヤロウを言われた後に、再び「じろう」さんからメールがやって来たそうです。
しかし、最終的に「じろう」さんは自分が時間に追われすぎて効率ばかり重視しすぎていたかも、礼を尽くすならピン札の方がいいかも・・と反省のメールを送って来たそうなんです。
というわけで、この「ピン札にするのが面倒くさい話」ですが、「じろう」さんの気持ちは物凄くよく分かるし、これはじろうさんも神田伯山氏もどっちも正解なんですよ。
自分の経験談から言わせてください。
とある寺院で人が有料で集まるイベントに受付の対応として参加した時に、このピン札の問題がありました。
受付はお金のやり取りが発生するのですが、お寺で用意したお釣りのお金がすべて「ピン札」だったのです。
お寺の気持ちも分かります。
お寺の関係者は、自分たちが『「厳かな場所だが親しみやすい地域の拠点でもある一方で、どこか敷居が高く自分たちとは縁遠い場所だと感じる」と住民からは思われているだろうな』と考えてしまう部分がどこかであるようなのです。
まぁ実際、普段付き合いの少ないお寺の場合、一般市民だと厳粛で神聖な近寄りがたい場所に見えている時がありますからね。
そういった感情を払拭し、「来てくれて感謝します」という意味も込めてピン札を用意したらしく、ここはお寺側が結構こだわっていたと思います。
しかし、実際に受付でお釣りを返す方の身になると・・・ピン札面倒くさい!
ピン札って、くっついてめくれないじゃないですか。
実務的に考えると、お釣りを間違いやすくなるからしわしわのよれよれで全然良かったんです。
実際にお釣りをもらった来院者の方々も「ピン札だった。ラッキー!」という感じではなく、自分で再度確かめもせず財布にしまわれたかたがほとんどだったと思います。
感謝の意を込めてお釣りのピン札を用意した
相手から要求されたわけでなく自発的に用意した(体験談のお寺さん)
謝意はピン札を用意していった方がいいんじゃない?(神田伯山氏)
ピン札じゃなくてもいいだろう
お釣りを間違えるからピン札でなくてもいい(体験談の受付)
両替に行くなんて効率が悪いからピン札でなくてもいい(じろうさん)
どちらも正解なんですが、唯一間違っているのがバレエ教室の先生ですよね。
相手の感謝の証を自分(バレエ教室)から要求するものではないと思うのですよ。
つまり「ピン札を持ってこい」と要求するものではなく、毎回自発的にピン札を持ってくる親御さんがいればそれに対して「バレエ教室」側も感謝するのが理想だと思うのですがどう思いますか?
ピン札の方が感謝の気持ちが見えるのかもしれませんが、よれよれのお札だからと言って感謝していないわけではないでしょう。
親御さんの普段の忙しい(かもしれない)生活を考慮して、その中から月謝を捻出してくれているやり取りを思えばそれだけでバレエ教室側も感謝をしなければならないでしょう。
なので、じろうさんのお友達が自分の都合でピン札に換えたくないと考えていて、その気持ちもないのであればそれでいいと思うのです。
感謝の気持ちはピン札以外にも表せますしね。
こういう話を書くと「けしからん」と言って眉間にしわが寄る年配の人の顔が思い浮かぶのですが、今の時代はタイパ、コスパ重視なのです。
もちろん古き良き時代の行いや考えを大切にするのも当然です。
つまり、どちらも正解であり法に触れたり相手を不快にさせたりしなければ、本人たちの自由なのです。
そうそう、このお話で一番びっくりしたのは最後に隠されていました。
じろうさんって・・・
「問わず語りの神田伯山」の過去回は各ポッドキャストで聞けますので、是非2024年11月15日放送分の「ほぼ女性からの人生が見えすぎるメール(寄席に行かずに恋をしろ)」を聞いてみてください。