日本製鉄がUSスチールの買収を提案した件について最近、アメリカの鉄鋼大手「クリーブランド・クリフス」が強い反発を示しました。
この動きは鉄鋼業界における競争の激化を象徴するものであり、今後の展開が注目されています。
クリーブランド・クリフスの反応
クリーブランド・クリフスの「ローレンコ・ゴンカルベスCEO」は、USスチールの買収に対する日本製鉄の動きに対して、強い不満を表明しました。
「日本は最悪だ」とか「身の程知らずが」とか言ってましたね。
彼は、アメリカの鉄鋼業界が直面している課題を指摘し、日本製鉄の買収提案がアメリカの雇用や経済に与える影響について懸念を示しました。
このような発言は、アメリカ国内での日本製鉄に対する反発を引き起こす要因となっています。
この背景には、アメリカの鉄鋼業界が中国からの過剰生産の影響を受けているという現実があります。
クリーブランド・クリフスは、アメリカの鉄鋼業界を守るために、強硬な姿勢を貫く意向を示しています。
アメリカの鉄鋼業界の現状
アメリカの鉄鋼業界は、近年、競争が激化しています。
粗鋼生産量国別ランキング(2020年)を見ると以下のようになります。
- 中国
- インド
- 日本
- アメリカ
- ロシア
特に、中国からの安価な鉄鋼製品の輸入が問題視されており、アメリカ国内の製造業者は厳しい状況に置かれています。
各企業別のランキングでは今回の主要企業の状況は以下のようになります。
- 日本製鉄:4位
- ニューコア:16位
- クリーブランド・クリフス:22位
- USスチール:27位
日本製鉄がアメリカ3位のUSスチールを買収すると、世界で3番目の粗鋼生産量企業となります。
しかし、アメリカの鉄鋼業界は、国内の雇用を守るために政府の保護政策を求める声が高まっています。
まぁ、それもそのはずでUSスチールは1901年創業の100年企業であり、創業者は鉄鋼王「カーネギー」と金融王「モルガン」ですからね。
買収案は結果どうなったか・・
日本製鉄の買収提案が実現すれば、アメリカの鉄鋼業界に与える影響は大きいと見たトランプ大統領候補(当時)は、選挙戦の最中にUSスチールの買収反対を表明していました。
USスチールの本社は、選挙戦では激戦区の「ペンシルベニア州」にあります。
となると当然、ハリス候補の民主党も反対に回ります。
結果、現大統領のバイデンが2025年1月3日に「国家安全保障上の懸念」を理由に、日鉄によるUSスチール買収取引を禁止しました。
これに対し、日本製鉄とUSスチールは裁判で争う姿勢を見せています。
日本とアメリカの鉄鋼業界における国際的な関係は、ますます複雑化していますね。
日本製鉄の買収提案は、アメリカ国内だけでなく、国際的な視点からも注目されています。
特に、中国の影響力が強まる現状、日本とアメリカがどのように協力し競争していくのかが問われているのです。
国際的な視点から見ると、日本製鉄の買収提案は、アメリカの鉄鋼業界における競争の構図を変える可能性があります。
アメリカの鉄鋼業界が直面する課題に対して、日本製鉄がどのように対応していくのか、今後の展開が期待されます。
クリーブランド・クリフスの真意
日本製鉄のUSスチール買収提案に対して、憤っていたクリーブランド・クリフスのローレンコ・ゴンカルベスCEOですが、「アメリカのために」というよりは「自社のために」という思いが強そうです。
実は、クリーブランド・クリフスもUSスチールの買収提案に参加していました。
米国2位のクリーブランド・クリフスとUSスチールが合併すれば米国内での地位が高まります。
しかし、USスチールが採用した買収提案は日本製鉄のものでした。
米国1位を目論んでいたクリーブランド・クリフスは、この結果でUSスチールが単独で米国内2位に躍り出るのを黙って見過ごすわけにはいかなかったわけですね。
(まとめ)日本政府の対応は?
USスチールの買収が実現すれば、日本製鉄はアメリカ市場での地位を確立できるかもしれませんが、最初に反対したトランプ次期大統領、一歩遅れて反対を表明した現職のバイデン大統領、そして粗鋼生産業で米国2位のクリーブランド・クリフスの強い反発と続き、実現の可能性は不透明になりました。
もう少しでトランプが次期大統領として正式に就任すると、おそらくうまくはいかないでしょう。
なぜならトランプが掲げる公約には、「不法移民の追い出し」、「海外拠点からの逆輸入を廃止し自国生産に戻すための高い関税率」などがあるからです。
外国人を入れず、アメリカの企業による生産量増加を目指しているのに、日本製鉄の動きは全く真逆の流れですから・・。
企業案件とは言え、外交問題にも発展しそうな今回の買収提案は、特に相手がアメリカとなると日本国政府としても難しい局面を迎えるでしょう。
ゴンカルベスの強気発言に「企業の問題だから・・」と弱腰の発言をした政府が、今後どのような対応を取るかにむしろ注目しています。