「終活」に励む年配のかたが増えているそうです。
筆者の知人のお母さんがこの手の詐欺に遭う既のところまで行ったようで、実際に被害はなかったものの、「記事を読む人の後学のために書いてもらっていい」という許可を知人からもらいましたので、お話してみたいと思います。
このお母さんを仮にA子さん、息子である知人をBさんとしましょう。
A子さんは70代となり、そろそろ自分の最後の片づけを考えるようになり、Bさんにも少しだけ「そのような考えを持っている」と話していたそうです。
一番気にしている部分がやはりお金だったそうで、あまり多くを残せるわけではないが2人の息子にそれぞれ少しくらい渡せる分は貯えがあったと言うのです。
ある時、そんなA子さんの気持ちを見透かすように、1通のチラシが投函されていました。
中を見てみると「終活セミナー無料開催のご案内」と書かれていて、下の方に以下のようなセミナー内容が箇条書きされていたようです。
- 改定された相続税・贈与税について専門講師による講義
- エンディングノートの正しい書き方
- 争いのない遺言書の作成方法
正に、A子さんにとっては知りたい内容ばかりでした。
「なんてタイミング!」
と、結果的にそのチラシに書いてあったセミナー会場へいそいそと出かけてしまいました。
ちなみに、普段一緒の家で暮らしていないBさんには、このセミナー案内のチラシについては何も言わなかったのです。
Bさん曰く、「自分もあのチラシを事前に見ていたら絶対に行くな、と言ったはず」と憤っていました。
A子さんはあまりのタイミングにチラシの内容を信じてしまったようですが、それよりも信じた理由が「新聞広告だと思った」からだそうです。
つまり、新聞にお金を払ってまで広告を入れるくらいだから大丈夫だろう、と。
でも後日になってよくよく考えたら、新聞と何かの間に挟まっていただけで、たぶん単なるポスティングのチラシではなかったかと思い直しました。
A子さんは、千葉県のとある住宅街に住んでいて、そのセミナー会場までは電車1本乗り継ぎなしで行ける場所だったのも災いし、「新聞広告だし電車1本で行けるし無料セミナーだし」と総合的に判断して参加してみようと思ったそうです。
そして、指定日時に指定会場へと到着しました。
会場にはA子さんと同じように年配の方々が数十人規模で集まっていました。
最初は、チラシに書いてあった講義が実際にあり、自分が亡くなった後の相続時の税金や生きている間の贈与に関する税金などの税務知識を教えてもらったのですが、おそらくこれが詐欺の入り口となっていたのでしょう。
これでこのセミナーは大丈夫と安心させ、その後はアレを買え、コレを買えとやたらと商品を勧めるセミナーと様子が変わり、A子さんはこの時に「何かおかしい・・」と気が付きました。
生前墓の案内に始まり、後見人を紹介する、いやいや元気でいるのが一番と訳の分からないサプリメントの紹介まであり、エンディングノートの書き方を学びたかったA子さんはサプリメントの話が出た時点で、退出しようとしました。
会場の出入り口は1つだけで、そこにはセミナー主催の関係者たちがいました。
「プレゼントもありますし最後まで残ってください」のような感じで戻されそうになりましたが、実はこのA子さんは何でもハキハキ物を言うタイプで、気が強い人だったのです。
「無料で色々な講義を受けられるって言うから来たんだ!変な物を売るようなら警察に行くよ!!」
という感じで大声を出したそうです。
そのやりとりを聞いたセミナー参加者のかたも、我に返ったのか何人か会場の外に出たようでした。
A子さんは憤慨しながら駅までの帰り道を歩いていました。
そして電車に乗ってから1つ気になった点を思い出しました。
それは、セミナー会場に入る前に、受付のような場所で自分の名前と住所、年齢を書いていたのです。
何かに悪用されないだろうか・・・。
結局、A子さんはBさんにこの顛末を相談した、というわけです。
書いたのが名前・住所・年齢だけであったのをA子さんに確認したBさんは、一緒に最寄りの警察署まで相談に行きました。
セミナー自体にはAさんが自ら行っているので、その会場で行われていた内容や関係者たちについて警察ももちろんどうのこうの言えないし、実際にA子さん宅で事件があったわけでもないので、警察は動けないが周知しておく、という形で終わったそうです。
その後、しばらくBさんが実家にもたびたび泊まるようになったのは言うまでもありません。
現在まで特に何もないのですが、その終活セミナーの主催者側が手にしたA子さんや他の参加者の情報をどのように利用するのかが分からないですよね。
参加された人数の規模もそれほど多くないですし、ダイレクトメールなどの送付ぐらいで済むのであればいいのですが、心落ち着くまでもう少しかかるかもしれませんね。
とにかく、詐欺というのはいつでも身近にあると思った方がいいでしょう。
自分だけは大丈夫という考えは捨ててもらって、いつでも対策できるようにしておきたいですね。
今回のA子さんのようにすぐに息子であるBさんに相談できたのも大きかったと思いますし、お金に余裕のある年配のかたを狙う詐欺は今後ますます増えると思いますので、どうか引っ掛からないようにお気をつけください。