架空のOLになりきったバカリズムが綴ったブログを原作としている「架空OL日記」と言うドラマがあります。
その原作ブログである「架空升野日記」は、今でもネット上に残っているので見られるようになっています。
2006年はライブドアブログで公開され、2007年から2009年まではアメブロで公開されています。
一応分からないかたのために説明しておくと「升野」というのは「バカリズム」の本名ですね。
「升野英知」がバカリズムの本名フルネームで、「バカリズム」というのは当初相方と一緒にコンビを組んでいた時のコンビ名です。
ピンになってからも「バカリズム」と言う名前で活動しているわけです。
「架空升野日記」のURLはアメブロのサブフォルダの部分が「bakarhythm(バカリズム)」、タイトルが「升野」となっているので、執筆しているのが誰だか簡単に分かってしまいました。
このブログは「升野(バカリズム)」がOLになりきって架空の日常を綴っているのですが、その内容が本当のOLが書いているようなリアリティがあり、ブログ執筆から10年の時を経てドラマ化されました。
ドラマの脚本もバカリズムが担当しているのですが、実際に映像で見るとブログ以上に秀逸なのです。
OLと言っても、働いている場所は架空の「みさと銀行」、つまり銀行ウーマンになります。
まず、どこからどう見てもスカートを履いて女子更衣室で他の女性行員と楽し気に語る・・「バカリズム」なんですよね。
女装をしているわけではなく、軽く化粧をした女性の振りをしているだけでどう見ても男なのですが、周囲の本当の女性たちも同じ女性として接しています。
そして、一緒に食事をしたり買い物をしたり通勤で一緒に歩いたりしても何の違和感もなく溶け込めているのです。
これ、バカリズムが完全に女装をして女性に見えてしまったり、女性のように振舞われたりすると気持ち悪いだけになると思いませんか?
でも、原作ブログの通り「女性の振りをしているバカリズム」が「なぜか普通に女性として日常を過ごしている」と分かって見られるのでそこがやはり面白いところですね。
「女性の振りをする」って簡単にできそうで難しいと思うのです。
原作のようにブログの文章だけなら何とかなりそうですが、実際に女優たちと一緒に女性の会話シーンを演出したり、女装などで女性を強調せずにいかに女性たちと一体化できるかを演出したり・・。
バカリズム自身が「升野英知」という女性の振りをしている男として出演しているので、自身の演技力も求められる上、脚本の面白さも求められる。
OLの振りをしているからと言って女性になりきった「気持ち悪さ」という不快な思いを視聴者にさせず、女性たちの輪に加わっているバカリズムを自然に女性行員たちの一人として見せるのは、企画力としてもさすがの出来だなと思うのです。
かと思えば、女性たちでも”そんな話する?”というエピソードを挟んできます。
第3話で、みんなでお食事している時に小峰様が、ハンバーグが来る前にグロスを塗ってしまったので、食べた後にまた塗り直さなければならなくなった、と語るシーンがあります。
升野は、「それって、風呂から上がった後にトイレに行きたくなった時のもったいない感と似ている」と心の中で思うのですが、さすがに食事中なので自重するわけです。
ところが、真紀ちゃんが「その小峰様の失敗って、風呂上りに便意を催した時と似ていますよね。」と発言してしまうのです。
そこからしばらくその話で盛り上がったところで、升野が「ていうかみんな全然平気だった」と心の中で思うわけです。
こういう女性の集まりなのに、敢えて少しお下品な会話シーンを演出してその内容でクスっと笑わせてくれるところも「架空OL日記」の魅力だと思うのです。
3話以降で、本気笑いや演技の延長などアドリブが結構多くなってくるのがまた面白いんですよね。
演じている女優たちも何だかみんな楽しそうです。
常識に捉われると、「女性の振りをしている男が銀行でOLなんかできるわけがない」と考えてしまいますが、その状況を自然体に提供した「架空OL日記」はバカリズムらしい傑作品だと思います。
それにしても、「架空だもんね」と気づかされる最後のシーンは結構せつない・・・。