こうやって日頃からつらつらと(だらだらと?)文章を書いていますが、実を言うと裏では色々と気をつけている点が結構あります。
今回はその内の1つについて語ってみましょうか。
それは、「慣用句の使い方」・・・ではなく「慣用句を使わない」文章です。
慣用句とは
「慣用句」ってどういう風に使うかご存じですか?少し例を挙げてみましょう。
慣用句の例(最近よく見る5選)
大谷選手のホームランは絵に描いたように美しい放物線を描いた。
大谷選手の活躍には目を見張るものがありますねぇ~。
どこまでも飛んでいく大谷選手のホームランにチームメートも開いた口が塞がりません。
大谷選手にホームランを打たれた相手投手はその瞬間、唇をかんだ。
メジャーリーグで活躍する誰もが大谷選手の活躍に舌を巻く。
連日のドジャースネタで申し訳ありませんが、最近よく見る慣用句の例を挙げてみました。
これらの文章を読むとどうですか?
おそらく、書き手が何を伝えようとしているのか、読み手側は理解できると思います。
「美しい放物線を描いた→とても美しい」、「活躍には目を見張るものがある→本当に驚く」となります。
でも、これらを読むと「はい、はい、そうね、そうね」と肩をすくめませんか?・・・(あっ)いや、あきらめのため息が出てきませんか?
そう、これらはよく使われる比喩表現で、文章だけでも驚きの様子や呆れた様子がビジュアルでイメージできるように、つまり「読み手に分かりやすくイメージしてほしい」という思いで使われています。
しかし、読者はこの「どこかで聞いたようなフレーズ」にはもう飽き飽きしているはずです。
そして、書き手も実はこのフレーズが「古めかしくて今さらな表現である」と気が付いています。
では、なぜそれ以上に、この今さら感な表現が多投されるのでしょうか?
その理由が「言葉を捻ったような格好良さ」を打ち出して簡単に表現を変えられるからですね。
たまにしか文章を書かない人、あるいは専門的に文章を扱う仕事をしていない人は、意外とこのような慣用句を多投しません。
むしろ普段から文章を書いているような手練れの人の方が、こういった言葉のテクニック的な物を使おうとしがちです。
毎回毎回、同じような流れの文章を書いていると、”型にはまった通り一辺倒だな”という思いが湧いてしまい、「それなら少し捻ってみようか」と考えてしまうわけですね。
読者のためにビジュアルをイメージさせる気持ちがあればいいのですが、「ありきたりな表現を変えてみたい」というただの独りよがりであれば、よく見る慣用句は使わずに素直に書いた方がいいでしょう。
「唇をかんだ→悔やんだ」
「舌を巻く→感心している」
慣用句と同じように、よく聞く言い回しにも気をつけた方がいいでしょう。
最近、「踊る大捜査線」の最初の映画が地上波で放送されていて、久々にあのフレーズを聞きました。
事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きてるんだ!
映画のストーリーの流れでこのセリフが入ると、「おおぉっ、青島がとうとうキレた!!」となり非常に盛り上がったものです。
映画を見ていない人に簡単に説明すると、「(警察のお偉いさんたちへ)現場に出てこないで会議室でぐだぐだ話ばっかりしたって解決しねーよ。事件はこっち(現場)なんだよ!」として事件現場から操作会議室のお偉いさんたちへ無線で発した怒りのセリフとなります。
この名ゼリフをそのままビジネスシーンに持ち込んだらスルーされた、という話題を見つけました。
おそらく、「仕事は会社にはないんだよ!仕事は外に転がってんだよ!」と言いたくて、先ほどの「踊る大捜査線」のフレーズを使ったのでしょうけれども、以下の点で失敗していますよね。
- この映画を知らない世代に言っても響くと思っている
- 使い慣れた有名なフレーズを言えば響くと思っている
知らない世代は真顔で「?」になるでしょうし、知っている世代でも「は?!どっかで聞いたわ」と笑われ馬鹿にされるのがオチですね。
そう、どこかでよく聞くようなフレーズは対面であっても、文章であってもむやみやたらと使うものではないのです。
むしろ全く使わない方がいいです。使うなら新しい表現を。
Z世代に伝わらない言葉は他にも
今の若い世代を「Z世代」と言ったりしますが、古い世代が発する言葉が彼らに伝わっていない場合が他にもあるかもしれません。
先月(2024年8月)、大塚製薬が実施した「会話のすれ違いに関する世代間ギャップ調査」で、堂々一位となったのは「一丁目一番地」だったそうです。
- 一丁目一番地
- よしなに
- 鉛筆なめなめ
- ネゴる
- 手弁当
一丁目一番地の意味と使い方
業務や課題などの最優先事項を言います。
部下に「それ、一丁目一番地な。」と言っても通用しないのですね(笑)
よしなにの意味と使い方
「よしなよ~。」ではありません。
「よしなに」は、簡単に言えばよろしくの意味ですね。
「どうぞよしなに」とか「よしなにお伝えください」などです。
でも、これは筆者の周りの年配の人でも使っている人がいなかったんですが、どうでしょうかね。
鉛筆なめなめの意味と使い方
この表現って、昔の小説とかでたまに見たような気がします。
日常会話ではほとんど使わなかったですね。
「ごまかす」という意味が強いですが、よくよく考えれば気持ち悪い表現ですよね。
「その書類、鉛筆舐め舐めしとくわ~。」
ネゴるの意味と使い方
これ、正直使った記憶がないです。
というか、使われた記憶もない。
「ネゴシエーション」から来ているらしいので、刑事ドラマなどでもすっかりおなじみとなった「ネゴシエーター」から考えれば「交渉する」という意味になるわけですね。
「その案件、事前にネゴります。」
手弁当の意味と使い方
「手弁当」は結構ありましたね。
これはZ世代に通用しないかもしれませんが、聞けば何となくその世代でもイメージできるのではないかと思いますけどね。
「その仕事、手弁当でやっつけました。」
つまり、「無報酬で」や「人のために何の見返りもなく」という意味ですね。
(まとめ)慣用句と言い回しには注意
というわけで、普段文章を書いている身としては、今回のような安易な比喩表現はなるべく書かないように気をつけています。
意識しておくと、自分が比喩表現を使った時にすぐに気が付きます(この記事内で書いてしまった表現もすぐに書き直してあったと思います(笑))。
組織的にライティング作業を行っている人達であれば、聞いたような比喩表現に走らないように、全員に意識づけが必要かもしれないですね。
ライティングの表現方法の統一は大変かもしれませんが「全員野球」でいきましょう。
全員野球の意味と使い方
組織の人達全員で協力して目標に向かうさま。
※使い方は上を参照