これまでも日本で活躍した多くのプロ野球選手たちが、アメリカのメジャーリーグベースボール(以降、MLB)の舞台へと挑戦していきました。
現在も投手・野手・両方と様々な選手が活躍していますが、今回はそんなMLBの各チームが本拠地にしている場所、つまり”地名”について語ってみたいと思います。
そもそもMLBの球団数はいくつある?
MLBは、現在アメリカンリーグとナショナルリーグがあり、各リーグは東地区、中地区、西地区と5球団ずつに分けられています。
MLB球団一覧
ア・リーグ | ナ・リーグ | |
---|---|---|
東地区 | ・ニューヨークヤンキース ・ボストンレッドソックス ・ボルチモアオリオールズ ・タンパベイレイズ ・トロントブルージェイズ | ・ニューヨークメッツ ・アトランタブレーブス ・フィラデルフィアフィリーズ ・マイアミマーリンズ ・ワシントンナショナルズ |
中地区 | ・シカゴホワイトソックス ・ミネソタツインズ ・デトロイトタイガース ・クリーブランドガーディアンズ ・カンザスシティロイヤルズ | ・シカゴカブス ・ミルウォーキーブリュワーズ ・ピッツバーグパイレーツ ・シンシナティレッズ ・セントルイスカージナルス |
西地区 | ・シアトルマリナーズ ・オークランドアスレチックス ・ロサンゼルスエンゼルス ・ヒューストンアストロズ ・テキサスレンジャーズ | ・ロサンゼルスドジャース ・サンディエゴパドレス ・アリゾナダイヤモンドバックス ・コロラドロッキーズ ・サンフランシスコジャイアンツ |
さて、これらの各チームの本拠地がある地域名を見てみると実は、「市の名前」を冠にしているチームと「州の名前」を冠にしているチームが存在しているのが分かります。
市の名前 | 州の名前 | 首都特別区の通称 |
---|---|---|
・ニューヨーク×2 ・ボストン ・ボルチモア ・タンパ ・トロント ・アトランタ ・フィラデルフィア ・マイアミ ・ワシントン ・シカゴ×2 ・デトロイト ・クリーブランド ・カンザスシティ ・ミルウォーキー ・ピッツバーグ ・シンシナティ ・セントルイス ・シアトル ・オークランド ・ロサンゼルス×2 ・ヒューストン ・サンディエゴ ・サンフランシスコ | ・ミネソタ ・テキサス ・コロラド ・アリゾナ | ・ワシントン |
圧倒的に市の名前をチーム名の冠にしている球団が多いですが、現在4球団が州名をチーム名につけているのも分かりますね。
各球団が本拠地にしている地域について、もう少し掘り下げてみたいと思います。
ワシントンナショナルズは唯一
ワシントンナショナルズは、アメリカ合衆国の首都である「コロンビア特別区」の通称ワシントンD.C.の「ワシントン」ですね。
このチームはチーム名と本拠地を変更した球団においては「2005年からチーム稼働」と一番新しいチームになります。
そのため、年配の方だと「モントリオールエクスポズ」を懐かしむかたの方が多いのではないでしょうか。
ちなみにモントリオールは「カナダ」の都市なので、エクスポズ時代であればチーム名の冠は都市名でした。
そして、エクスポズのまま続いていれば、トロントブルージェイズと共にカナダを本拠地とする2球団として存在できたのですが、残念ながらエクスポズ消滅と同時にMLBでのカナダを本拠地とする球団はトロントブルージェイズの1球団のみとなってしまいましたね。
新規参入組は州名が多い
MLBは、1969年に各リーグが東西地区に分かれ、1977年にアメリカンリーグにシアトルマリナーズとトロントブルージェイズが新規参入してからは、16年ほど体制の変更なく行われてきました。
しかし、1993年にコロラドロッキーズとフロリダマーリンズ(現在のマイアミマーリンズ)の2球団が新たに加わりました。
さらに、1998年にはアリゾナダイヤモンドバックスとタンパベイデビルレイズ(現在のタンパベイレイズ)が加わったわけですが、直近の新規参入球団であるこれら4球団の内、3球団が州名をチーム名の冠にしています。
- コロラド
- フロリダ
- アリゾナ
1998年の新規参入前までは「州名がチーム名になっている球団」は2つだけでしたが、一気に増えたわけですね。
しかし、マーリンズは2012年から新球場建設に伴いチーム名をフロリダからマイアミへと変更しました。
これで、マーリンズも冠は「マイアミ」というフロリダ州の市の名前となったわけです。
州名と市名が同じだけど・・
MLBの超人気球団と言えば、やはり「ニューヨークヤンキース」ではないでしょうか。
ニューヨークのファンやメディアは特に厳しく、同じニューヨーク市を本拠地とする「ヤンキース対メッツ」はサブウェイシリーズ(お互いの本拠地を地下鉄で行き来できる)と呼ばれ大変人気がありますよね。
さて、このニューヨークですが、この両球団が本拠地にしているのはニューヨーク市です。
ニューヨーク市はニューヨーク州の最大都市ですが、ニューヨーク市は5つの行政区に分けられていて、ヤンキースとメッツはそれぞれブロンクス区とクイーンズ区に本拠地を構えています。
この2つの区を比べてみると、メッツが本拠地とするクイーンズ区の方が以下の比較で優勢です。
- 人口の多さ
- ニューヨーク都市圏の3大空港の内、2つの空港がある
- 全米オープンテニスの開催地でもある
ニューヨーク市は広いですから、同じ市を本拠地にしていても熱狂的なファンが二分されている理由が分かりますね。
カンザスシティは2つある?
ロイヤルズの本拠地としておなじみの「カンザスシティ」という都市ですが、これは何州にあるかご存じですか?
実は、「カンザスシティ」というのは、ミズーリ州とカンザス州の両方にあります。
名前から「カンザス州」の方が正規(?)の「カンザスシティ」なのかと思いきや、一般的に「カンザスシティ」と言えばミズーリ州の方を指すそうです。
都市の大きさとしてもミズーリ州の「カンザスシティ」の方が大きいですし、ロイヤルズが本拠地を構える「カンザスシティ」もミズーリ州の方になります。
さて、ミズーリ州に本拠地を置く球団が実はもう一つあるのですが、どこの球団でしょうか。
そう、その球団とは「セントルイスカージナルス」ですね。
カージナルスの本拠地である「セントルイス」は、ミズーリ州の東端、そして「カンザスシティ」はミズーリ州の西端にあります。
ア・リーグとナ・リーグなので試合数は少ないですが、この両球団が対戦した時は「同じ州同士の対戦」という意味になるのです。
テキサスは・・
さて、カンザスシティと同じように同じ州で戦うチーム同士をもう一つ挙げておきましょう。
それはア・リーグの西地区、テキサスレンジャーズとヒューストンアストロズです。
1972年にワシントンセネタースがテキサス州アーリントンに移転した誕生したのが「テキサスレンジャーズ」です。
球団創設以来、ワールドシリーズ制覇を成し遂げたことがない球団の1つでしたが、2023年にめでたく初制覇を果たしました。
このレンジャーズが本拠地を置くのはテキサス州アーリントンですが、チーム名には「テキサス」と州名を付けています。
そして、このテキサス州には州最大都市の「ヒューストン」に本拠地を構えるアストロズがいます。
元々、アストロズは長い間ナ・リーグの中地区のチームでした。
しかし、球団数が30球団になった1998年以降、このナ・リーグの中地区には唯一6球団がひしめき合っていました。
1998年当時のMLB球団数一覧
ア・リーグ | ナ・リーグ | ||||
---|---|---|---|---|---|
東 | 中 | 西 | 東 | 中 | 西 |
5 | 5 | 4 | 5 | 6 | 5 |
球団は30球団で6地区に分割されるのに、ア・リーグの西地区が4球団でナ・リーグの西地区が6球団といびつな形をしていましたね。
上のような各地区の球団数でなんと14年間も再編せずに行われてきました。
さすがにこれでは、ナ・リーグの中地区に所属する球団だけポストシーズンに進むのに不利益となるので、2013年、ほぼアメリカの真ん中の南部にある「ヒューストンアストロズ」がア・リーグの西地区へと移動して、各地区とも5球団ずつとなったわけです。
位置としては中地区なのでしょうけれど再編によって西地区へと移動になったわけです
そして、誕生したのが同じア・リーグの同じ地区に所属する州最大の都市「ヒューストン」とごく普通の街「アーリントン」によるテキサス州対決であり、片方は州名がチーム名という珍しい形となりました。
カリフォルニア州
さて、「州対決」という観点で考えると、同じ州同士での戦いが一番多くなるのがこの「カリフォルニア州」でしょう。
現在では、「ロサンゼルスドジャース」、「ロサンゼルスエンゼルス」、「サンフランシスコジャイアンツ」、「オークランドアスレチックス」、「サンディエゴパドレス」の5球団がカリフォルニア州の球団となります。
実は、この5球団の内、その昔長らく州名を冠にしていた球団があるのをご存じでしょうか?
それは、「カリフォルニアエンゼルス」、現在の「ロサンゼルスエンゼルス」になります。
昭和生まれのMLB通は、むしろ「カリフォルニアエンゼルス」の方がしっくりくる方もいるのではないでしょうか。
創設時の球団名は現在と同じ「ロサンゼルスエンゼルス」でしたが、この時代はドジャースの球場を本拠地にするなど、低迷が続いていました。
1966年に本拠地をアナハイムに移転し、チーム名も「カリフォルニアエンゼルス」と改称したわけです。
「カリフォルニアエンゼルス」創設時は、州名を冠にしていた球団は実は「ミネソタツインズ」と「カリフォルニアエンゼルス」の2球団だけでした。
冒頭で挙げた表を見ると分かると思いますが、この1966年時点では現在州名を冠にしている球団は、ミネソタ以外どれ一つ存在していないからですね。
現在は、「ロサンゼルスエンゼルス」となりカリフォルニアの名前は消えてしまいましたが、インターリーグで毎年必ず対戦のある「ドジャース対エンゼルス」はニューヨーク対決と同様、人気のある対戦カードとなっています。
州で見てみると、カリフォルニア州はとても広いので、この5チームで同地区対決と騒がれるのは先にも挙げた「ドジャース対エンゼルス」くらいで、それも「ロサンゼルス対決」です。
それ以外の試合は、「カリフォルニア州同士」という色はまったく出てきませんけどね。
あまり気が付かない州同士
同じ州同士の対決というのはあまり気が付かないものですが、以下の2パターンも対戦時には州対決となります。
(ペンシルベニア州)「フィラデルフィアフィリーズ」対「ピッツバーグパイレーツ」
まとめ
さて、今回はMLB球団30球団でも各チームの本拠地である市や州などの「地域」について書いてみました。
アメリカは州ごとに法律が違っていたり、「~州の出身」というように自分の過ごしてきた場所を非常に大事にしますが、MLB球団も州の最大都市や州都に本拠地を構えたり、州の名前の方を冠にしたり、州の中でもそれほど人口の多くない地方都市を本拠地にしていたりと様々ですね。
まとめてみると、州最大の都市に本拠地を構えている球団が多い傾向にありますが、2023年のワールド制覇をしたレンジャーズは、テキサス州においても3番目くらいの規模だったりします。
色々な視点で調べてみるとまた違った発見ができそうですね。