YouTuberで作家の「雨穴(うけつ)」さんをご存じでしょうか?
作家として本を出版し、YouTubeの動画でもミステリードラマを自分で作って公開するなど、マルチなコンテンツクリエイターとして活躍されています。
この雨穴さんは、とにかく謎の多い人物で素顔から本名、経歴などすべて不明なのです。
YouTubeのミステリードラマも自分が主人公で出演しているにもかかわらず、覆面を被ったままなので一切誰だか分かりません。
一応、「雨穴ブログ」やX、インスタもあるのですがブログのプロフィールが既にミステリーとなっています。
独特な世界観が名前にも表れていて、IMEだと普通に「うけつ」と入力しても雨穴が候補に表示されないんですよね。でも単語登録するほど入力しないし(笑)
さて、「雨穴」さんと言えばYouTubeにミステリー動画として最初にアップされた「変な家」ですよね。
不動産ミステリーとして不可解な家の間取り図の謎に迫るこのお話はもう4年も前にアップされたものになります。
雨穴さんと知り合いの「栗原さん」の人気の高さやストーリー展開などからもその反響は凄まじく、その後漫画化されたり実写化されたりと今では認知度も上がっていると思います。
YouTubeで定期的にアップされるミステリー動画は自主製作のためか前作から半年前後かかるため、2018年に開設されたYouTubeチャンネルの動画本数は49本しありません。
その内ミステリー動画は数えられるくらいです。
それでいてチャンネル登録者数は170万人と言うお化けチャンネルなんですよね。
先ごろ、日本出版販売が調べた2024年上半期のベストセラー総合ランキングで1位になったのが「変な家2」でした。
そして、前作の「変な家」が総合4位、「変な絵」が総合7位とトップ10に3冊がランクインされた正にNo.1ホラー作家としての地位を盤石にしている感があります。
動画や本を見ると分かると思うのですが、「雨穴」さんが作る話の構成は本当に綺麗にまとまっているのです。
読者を騙してやろうとか出し抜いて謎だらけにしてやろう、のような意地の悪さを一切感じさせず、きちんと組み立てられた設計図上をストーリーがそのまま進んでいくような印象を受けるのです。
それでいて展開の強弱もありストーリーに引き込まれ、気が付いたらその世界観にどっぷりと浸かってしまいます。
今回はその中から「変な絵」について語ってみたいと思います。
序章はYouTubeで
総合ランキング7位に入った「変な絵」は、序章部分がYouTubeで誰でも見られるのですが、続きを知るなら書籍(紙・電子)を購入する形となり、この書籍こそが7位にランクされた「変な絵」となります。
お話の序章となるYouTubeのタイトルは、「この絵の仕掛けが解けますか?『変な絵』 第一章」となります。
全部で約26分半という長さの動画で、書籍に続くと分からず最初は「見るのにちょうどいい長さだね」と思ったのですが、なんと続きは「書籍を購入して」という形式ではないですか。
うぉぉぉ~と吉田栄作のような叫び声(古い!)を上げながら、「変な絵」を買わずにはいられない衝動に駆られます。
と言うわけで、その動画の部分と書籍の一部をご紹介してみましょう。
きっかけは13年前にとあるブログにアップされた写真から端を発します。
これを教えてくれたのは、最初の「変な家」から雨穴さんの動画にレギュラー出演している建築家の「栗原さん」です。
栗原さんが教えてくれたのは、「七篠レン、心の日記」というブログでした。
これ、実は本当にライブドアブログを使った本物のブログがネット上に存在しています。
上のブログ名で検索して読んでみましょう。
栗原さんは雨穴さんにこのサイトを見るように言います。
最新の記事は「一番愛する人へ」というタイトルでした。
「絵の秘密に気づいた」「どんな罪を」「あなたを許すことはできない」「でもあなたを愛し続ける」というような文面が書いてあります。
そこで、栗原さんが昔読んだように、雨穴さんもこのブログ記事を最初から順番に読んでいきます。
ほのぼのとした愛妻日記が続くと思いきや最後から2番目の記事で奥さんが亡くなった事実が分かり、そして最後の記事が先ほどの「一番愛する人へ」になります。
雨穴さんは最後の2つがおかしいと言いますが栗原さんは他の記事にもおかしいところがある、と指摘します。
そして、一番の問題は奥さんが描いたという5枚の絵。
これらの5枚の絵をどのように組み合わせればヒントとなる新たな絵が生まれるのかは分かった雨穴さんでしたが、ではこれは犯人を意味しているのか?
それとも・・・?
その続きは書籍「変な絵」へと移ります。
新品価格 |
変な絵
書籍に移ると、動画に出ていた雨穴さんがいなくなります。
というのも、動画内で雨穴さんにこの「変な絵」のブログを教えた栗原さんは「十年ほど前の話になりますが・・」と言っていましたね。
つまり、現在社会人である栗原さんが雨穴さんに話したこの「変な絵」の話は、栗原さんがまだ大学生時代に体験した話なのです。
そして、書籍では栗原さんの大学生時代に時間軸が移ります。
栗原さんはサークルの先輩である佐々木修平に「奇妙なブログがある」と話し始めるのが第一章となります。
つまり、YouTubeの内容と書籍「変な絵」の第一章は、話している相手が雨穴さんか佐々木かの違いはあるにせよ、内容は同じとなります。
まずはこの「七篠レン、心の日記」ブログのレンの日記が謎ですよね。
あれほど愛していた奥さんの何に気が付いて許せなくなってしまったのか?
それが徐々に判明していくわけですが、第二章のポイントは「七篠レン」はおそらく偽名である点と、子供の父親と母親は誰なのかと言う点でしょう。
続く三章で奥さんの学生時代があり、最終章でこのお話の超重要人物の過去と思惑が判明して、謎が解かれていきます。
最初に誰もが見ていた景色とまるで違う景色になったわけですが、誰もが悲しい過去を持っていたけれども、レンがブログで妊娠中の奥さんの近況を報告していた間が唯一の幸せの時間だったというわけですね。
すみませんが、あまり話すとネタバレになるのでこの辺にしておきます。
とにかくYouTubeで見るだけでは気になってどうにもならないので書籍を購入して読んでみてください。
書籍には雨穴さんが一切出てこなかったけど楽しめるという話の構成と、絵やブログ文、図などを散りばめた演出は本当に見事だと思っています。
今年の2024年上半期のベストセラー総合ランキングで第7位となった「変な絵」を堪能してください。
その結果、謎多き作家「雨穴さん」のファンが1人でも増えてくれれば嬉しいですね。