あの名司会者の「古舘伊知郎」氏が「人前でリラックスして話すコツ」について語っていたのを「PRESIDENT(2025.3.7)」で読んだので、その内容を吟味しながら、話し方の技など何も持っていないながらも「講師」という立場に立っていた昔の自分に思いを馳せたいと思います。
もう20年以上も前の話ですが、パソコン講習が人気を博した時に、講師として常に30人前後を前に声を張り上げていた時期がありました。
著名人などを招いて講演会を開くという告知よりも、パソコン講習の告知の方が「人が集まる」という理由で、当時は各地域ではこぞって「パソコン初心者」や「Word/Excel講習」などが流行っていました。
それまでも人前でマイクを使って話す機会はあったので難しさは感じなかったのですが、それほど大きくない部屋で「講習を受ける人がすべて近い距離で自分の方を向いている」というのは、やはり緊張感もぐっと高まったものです。
パソコンの知識も伝えながら、参加した人に楽しんで学んでもらうためにはどのように講習を進めたらよいか・・・。
その当時考えていた注意点は3点だけでした。
講師が決まった時に「これだけは注意」と考えていた3つ
その当時、筆者が「パソコン講習の講師を務める」と決まった際に、人前で説明するなら「これだけは注意しよう」と考えていた点がありました。
- 専門用語ではなく分かりやすい言葉を使う
- 早口にならない
- 説明をした後に都度、受講者の様子を確認する
パソコン講習というのは、大概プロジェクターとスクリーンを使って画面を見ながらの説明になるので、ただ話しているだけよりは進めやすいです。
ただし、特にパソコンの使い方や文章作成、表計算となると当時の初心者には難しい言葉ばかり出てきますので、なるべく分かりやすいようにプロジェクターの画面の動きを見せた後で、言葉の説明を入れるように考えていましたね。
後は、言葉をうまく繋げらなかったり、説明に手間取ったりした時に、自分が早口にならないように気をつけ、説明後には受講している人たちの様子を逐一確認して、何か不安そうな顔や悩んでいる人の顔が見えたら補足の説明をするようにしていました。
人数もそれほど多くなく、特に初心者講習が多かったですから、和気あいあいとした雰囲気も結構ありました。
人前で話すとは言え、画面を使っての説明が大半だったので、それほど緊張や苦労もなく進められたと思います。
もちろん、古館氏が普段人前で話している環境とは比べ物にならないですが、それでも古館氏のコラムを読んでみると自分に欠けていた部分がいくつかあったのを発見したのです。
自分が満足していた
講習を円滑に進めるために、事前にある程度の構成を考え、実際の講習に入るわけですが、当然イレギュラーな事態も発生するわけです。
道から逸れた主題を元に戻すために、自分なりにうまく話を繋いでその場をまとめたりした時に、自分なりの満足感を味わいながら話をしていたのですが、自分が満足していたり自分が楽しく軽快に話をできている時は相手は「楽しい・面白い」と思っていないのです。
話している自分が満足を感じていたり、リラックスをしたりではダメだ、と。
聞いている人たちが楽しめるようにするために、自意識やエゴを捨ててでも、相手をリラックスさせるように話せなければダメなわけですね。
パソコン講習というのは、話す側が知識の引き出しを色々と披露すると「おー」とか「へぇー」とか結構いい反応が返ってくるので、優越感を感じる場面が多いのです(笑)
こういった講習であればそれでもいいのかもしれませんが、何かを伝えるために人に話す場合は、やはり相手に優越感を持たせる、つまり自分が一歩下がった状態で話を進めるという技も必要になるでしょう。
思えば、学びに来ている受講者たちを褒めて持ち上げるためのプラスマイナスの匙加減は使えていなかったですね。
とにかく、自分が話す内容に飽きられず付いてきてもらうために自分の思い描いていたプランをひたすらに進めていた気がします。
話す側がきちんと話せば、聞いている側は聞いてくれる。
パソコン講習ならそれでも通用するかもしれませんが、それはやっぱり”エゴ”なのでしょうね。
「間」を取るのは難しい
パソコン講習であれば実際に作業する時間が「間」となったりしますが、敢えて説明と説明の間に「間」を入れるのは難しかったですね。
ある説明からある説明へと移る間に、相手が心の中で考えたり返事ができたりする「空白」の時間を作ったり、そこからさらに相手の反応を見て言葉選びを変えたり、今にして思えばそういうところをもっと意識していれば良かったかもしれません。
これは、聞いている相手が1人でも複数人でも同じなんですね。
要するに、話している側の「一人よがり」になってはいけない、というわけです。
聞き手に心の中で返事をしてもらうための「間」を適度に作り、それがそのまま聞き手のリラックスにも繋がる・・。
最終的に話している自分がリラックスするためには、相手が気持ちよく聞いてくれる必要があるというわけですね。
(まとめ)古館氏の「人前でリラックスして話すコツ」はどれも相手ファースト
人前で皆に向かって話す場合、どうしても「自分のペースでその場を作っていこう」と考えてしまいがちですが、実はお互いのコミュニケーションで成り立っているんですよね。
そのためには、聞いてくれている相手の人(たち)とのコミュニケーションが大切であり、聞いている人たちが心の中で「返事」をするための時間、つまり「間」も大切になしなければならないのです。
「講習」という形であれば、一方的なしゃべりの場になっても多少は通用するかもしれませんけどね。
職業訓練校などで担当したデータベースやプログラミング初歩などの講習は、内容が難しくなるために自分の話だけで精一杯でした(笑)
「しゃべりには肌理(きめ)がある」
話している言葉の内容だけでなく、表情・身振り手振り・声の調子など話す内容にプラスアルファとなる部分で空間を一体化する。
文章書きも同じだと思いますが、常に相手の満足感を意識しながら話せる(書ける)話者になりたいものですね。