今回はウィンブルドンテニスについて少し語ってみようと思います。
そこからプレースタイルが「美しい」と形容されるあの選手が、ダートマス大学で話した「刺さる言葉」も思い出したので、それについても振り返ってみたいと思います。
2025ウィンブルドンで23年ぶりとなった出来事とは?
さて今年のウィンブルドンテニスの男子シングルス決勝戦で、「ヤニック・シナー」がイタリア人選手として初となるチャンピオンとなりました。
シナーはこの時点で世界ランキング1位、対戦相手の「カルロス・アルカラス(スペイン)」は世界ランキング2位という頂上対決で、これは「ロジャー・フェデラーVSラファエル・ナダル」以来となりました。
それよりも2002年以来23年ぶりのある出来事が話題となりました。
普段テニスをあまり見ないかただと、この出来事もそれほどインパクトのあるものではないかもしれません。
ただ毎年テニスを見るファン層からすれば、「言われてみればそうやね!」というくらい結構な衝撃が走るものだったのです。
その出来事とは・・・。
決勝戦に「Big4」がいなかったのです。
近年でテニス界の「Big4」と言えば以下の4選手を指しました。
- ロジャー・フェデラー(スイス)
- ラファエル・ナダル(スペイン)
- ノバク・ジョコビッチ(セルビア)
- アンディ・マレー(イギリス)
ではウィンブルドンの2003年から2024年までの優勝者と準優勝者を見てみましょうか。
| 年 | 優勝者 | 準優勝者 |
|---|---|---|
| 2003 | ロジャー・フェデラー (スイス) | マーク・フィリプーシス (オーストラリア) |
| 2004 | ロジャー・フェデラー (スイス) | アンディ・ロディック (アメリカ) |
| 2005 | ロジャー・フェデラー (スイス) | アンディ・ロディック (アメリカ) |
| 2006 | ロジャー・フェデラー (スイス) | ラファエル・ナダル (スペイン) |
| 2007 | ロジャー・フェデラー (スイス) | ラファエル・ナダル (スペイン) |
| 2008 | ラファエル・ナダル (スペイン) | ロジャー・フェデラー (スイス) |
| 2009 | ロジャー・フェデラー (スイス) | アンディ・ロディック (アメリカ) |
| 2010 | ラファエル・ナダル (スペイン) | トマーシュ・ベルディハ (チェコ) |
| 2011 | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) | ラファエル・ナダル (スペイン) |
| 2012 | ロジャー・フェデラー (スイス) | アンディ・マレー (イギリス) |
| 2013 | アンディ・マレー (イギリス) | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) |
| 2014 | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) | ロジャー・フェデラー (スイス) |
| 2015 | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) | ロジャー・フェデラー (スイス) |
| 2016 | アンディ・マレー (イギリス) | ミロシュ・ラオニッチ (カナダ) |
| 2017 | ロジャー・フェデラー (スイス) | マリン・チリッチ (クロアチア) |
| 2018 | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) | ケビン・アンダーソン (南アフリカ) |
| 2019 | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) | ロジャー・フェデラー (スイス) |
| 2021 | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) | マッテオ・ベレッティーニ (イタリア) |
| 2022 | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) | ニック・キリオス (オーストラリア) |
| 2023 | カルロス・アルカラス (スペイン) | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) |
| 2024 | カルロス・アルカラス (スペイン) | ノバク・ジョコビッチ (セルビア) |
優勝者がBig4の誰かであれば黄色を、準優勝者がBig4の誰かであれば水色を塗っています。
2003年の優勝者フェデラーから2024年の準優勝者ジョコビッチまで、決勝戦は常にBig4の誰かがいますね。
そして2003年から2022年までの20年間は、優勝者が必ずBig4の誰かになっているのが分かります。
とにかくこの4選手が参加していた大会は、本当にどの大会もこの4人の内の誰かが優勝し、多くはその対戦相手である準優勝も4人の内の誰かだったりします。
「グランドスラム」や「マスターズ1000」などの大きな大会はランキング上位選手は参加義務があるので、ケガでもなければ間違いなく出場するのです。
そうすると、他の選手たちはこの4人にはまず勝てない・・。
主要な大会などに参加し、1年を通した戦いの結果で集めたポイントによってランキングが決まるテニス界において、この4人の獲得するポイントはいつも群を抜いていて、ランキング1位もこの4人の内の誰かが居座る状態となっていました。
そんな長く続いた4強時代も移り変わって登場したのがシナーやアルカラスなどの世代なのです。
「ビッグ4」で最初にフェデラーが台頭する前の1990年代や2000年代初めはアメリカ人選手が強く、ヨーロッパはドイツ(旧西ドイツ)やスウェーデンが強かったので、今回「シナー」がイタリア人選手としてようやくトロフィーを掲げられたわけですね。
刺さる言葉
4強時代に終わりを告げたイタリア人のシナーのお話をする・・・わけではありません。残念ながら。
男子テニスにおいて、プレースタイルが「美しい」と形容される、いや形容された選手はただ一人、「ロジャー・フェデラー」です。
以前にもこのサイトのどこかの記事で書いた通り、フェデラーの晩年あたりから筆者もあまりテニスを見なくなりました。
それだけフェデラーのプレーには多くのファンと同様に筆者も魅了されてきたわけです。
ウィンブルドンは8度の優勝、4大大会すべてでは20度の優勝を獲得したフェデラーでしたが、実はフェデラーを評する人たちはその美しさのあまり「汗もかかず簡単にやってのける天才」のようなイメージで持ち上げました。
フェデラーのプレーを各大会の公式やファンがアップしているYouTubeなどで見ると、そっと腕で額の汗をぬぐい、冷静なプレーや表情で相手を見つめた後に、次のプレーの瞬間には簡単なようにパッシングショットを片手バックハンドで決めて見せるようなスーパープレーがたくさんアップされています。
そして観客からは思わず感嘆のため息が漏れていますね。
誰からも天才だと思われるフェデラーは引退後、自身の評価に対する葛藤や本音をダートマス大学の卒業式のスピーチで卒業生たちに吐露していました。
その言葉の数々からは、世間が評した「強さと才能」だけで片づけてほしくないという思いで溢れていました。
その時のスピーチから印象的な言葉を少し拾ってみまたいと思います。
effortless is a myth
「努力の不要は神話(つまり嘘)です」という意味ですね。
先ほども書いた通り、フェデラーは自身でも「おおよそ褒め言葉として”努力していないように見える”と言われてきた」と認めています。
しかしこういった評価を聞くたびにイライラした、と。
才能だけで上り詰めたわけではない、と卒業生たちを前にはっきりと否定していましたね。
ここでフェデラーが語った大事な点は
- 対戦相手に勝る努力をした
- 自分自身を信じていた
- 自分を信じるには努力が必要だった
対戦相手が強くても、ケガなどで自分の体調がすぐれない時でも自分を信じられる努力の積み重ねで勝利を得てきたというわけです。
it's only a point
「ただの1ポイントだ」という意味ですね。
テニスは過酷であり、毎回どんなトーナメントでもトロフィーをもらえるのは一人だけ、後はどんな選手でも帰りの飛行機でミスショットの場面を悔やんでいるのだそうです。
負けないために、最初に語った「努力」はしても、時にはボロ負けもする、と。
それでも努力し続け、競い続けた結果が、フェデラーの生涯成績となっているのですね。
さて、「ただの1ポイント」とはどういう意味なのか?
メジャーな大会からマイナーな大会まで優勝をたくさん勝ち取ってきたトップ選手でさえ、半分のポイントしか勝っていない、つまりセットカウント「6-0」で毎回勝つわけではなく、相手にセットを取られながら、ぎりぎりの勝負になりながらも最後には勝利する、というわけです。
そこからどんなに素晴らしいプレーで獲得した1ポイントもダブルフォルトで相手に与えた1ポイントも「ただの1ポイント」と、いつまでもこだわらない考えが生まれたそうです。
努力はもちろんする、けれども毎回ポイントを掴みに行くのではなく、「ダメな時もある」と受け入れてたのですね。
negative energy is wasted energy
「ネガティブは無駄なエネルギー」
1ポイントに悔やまないためにも、「過ぎ去った過去は、もう過去である」という考え方は重要です。
人生は浮き沈みが激しいジェットコースターであり、「人生でどんなゲームをしていても、時にはポイントを失ったり、試合に負けたり、仕事を失ったりする」というのが事実です。
落ち込んでいる時に自分を疑ったり、哀れんだりするのは自然である・・けれども、ネガティブな感情は無駄なエネルギーとなります。
The best in the world are not the best
「世界一の選手が最高というわけではない」
それはなぜか?
- 全てのポイントで勝つからではない
- 何度も負けるのを知っている
- その対処法を学んでいる
世界一の選手と言われても、それは最高の選手だから世界一なのではなく、上記のような完璧ではない故に努力をし続けてきたからこそ、「世界一」と言われてきたのでしょうね。
最後は原文訳そのままを載せておきます。
前に進み、絶え間なく努力し、適応し成長し、より懸命に賢く働くこと、忘れないで、賢く働くことを。
どんなゲームを選んでも、全力を尽くし、自分のショットを狙い、自由に戦い、全てを試し、そして何よりも互いに優しく楽しんでください。
フェデラーのようなトップ選手でも、努力と賢明な練習で試合にそれらを出し尽くした結果だったのです。
(まとめ)Retired,the word is awful
「引退という言葉はひどい」
冒頭でそのように話していました。
フェデラーは2022年にテニスを引退した際に、マスコミから「フェデラーが引退した」と書かれ、それに納得がいっていないようですね(笑)
現在は「テニスを”卒業”した生活を楽しんでいる」そうです。

